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<上>早期避難 自治体取り組み

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地下貯水施設や電柱標識

 田原本町社会福祉協議会の駐車場にあるマンホールのふたを開け、はしごを下りると、真っ暗で巨大な空間が広がっていた。4月に運用が始まった地下の雨水貯留施設。豪雨で水路からあふれた雨水をため、水量を調整しながらポンプで排水する。貯水量は隣接する同じ施設を合わせると、25メートルプール約10個分にあたる5000立方メートルに及ぶ。

地下に造られた雨水貯留施設。懐中電灯に照らされたコンクリートの柱や天井が、地下神殿のように浮かび上がる(田原本町で)
地下に造られた雨水貯留施設。懐中電灯に照らされたコンクリートの柱や天井が、地下神殿のように浮かび上がる(田原本町で)
予想される浸水の深さや避難所の場所などを知らせる標識(王寺町で)
予想される浸水の深さや避難所の場所などを知らせる標識(王寺町で)

 町が約5億3000万円をかけて整備した。きっかけは2017年10月22~23日の台風21号による浸水被害。この日は衆院選の開票が町社協で行われ、作業を終えた町職員が外に出ると、一面が水につかっていた。川が増水して水路から排水できず内水氾濫が起こり、町内で床上浸水10棟、床下浸水46棟の被害を出した。

 この貯留施設でも、入り込む水量が多すぎれば数分しかもたない。田原本町まちづくり建設課の扇谷広純課長は「完璧ではないが、5~10分あれば、避難する時間を稼げる」と強調。水害が迫る状況から住民をいかに避難させるか、自治体の取り組みが続く。

       ◎

 周囲を山で囲まれた奈良では、水害との闘いの歴史は長い。1889年の十津川大水害は、死者249人を出し、家屋の全壊などは565棟に達した。2011年の紀伊水害では、奈良、和歌山、三重3県で3000か所を超える斜面が崩れた。県内の死者・行方不明者は24人、全半壊家屋は120棟に及んだ。

 紀伊水害では、避難のあり方が問われた。3県の被災地区13か所全てで避難指示・勧告が発令されておらず、早期に避難する意識を高める必要性が訴えられるようになった。避難が後手に回った教訓を受け、気象庁も13年に「大雨特別警報」を新設し、数十年に1度の大雨が予想される場合、市町村単位で発表し始めた。

 被災地での取り組みも進む。紀伊水害で死者・行方不明者11人が出た五條市大塔町宇井では、台風が接近すると、市大塔支所の職員が、小雨の段階から谷や川に近い場所の住民に電話をしたり、直接家を訪ねたりして、避難を呼びかける。

 吉川佳秀支所長は「急に雨が増えるなど何が起きるか分からないというのが紀伊水害から学んだこと。少しでも早い避難が住民の命を守る。空振りに終わればそれでいい」と力を込める。

       ◎

 県内では山間部だけでなく、平地でも水害が繰り返し起きている。

 県内の河川は大和川に合流し、大阪湾へ流れる。大和川が増水すれば、支流から流れ込む水も滞り、周辺で浸水被害が繰り返されてきた。王寺町では、1982年の大和川大水害で町全体が水につかり、床上浸水1445棟の被害が出た。

 町は防災のため2019年から「まるごとまちごとハザードマップ」の取り組みを始めた。町内の電柱215本に、「想定浸水深」「避難所の場所」などを記した標識を掲示した。住民の防災意識を高め、避難に役立ててもらうのが狙いだ。

 大和川大水害を経験した平岡秀隆副町長は気を引き締める。「当時は川が氾濫するとは思ってもいなかった。水害対策に終わりはない。平時から警戒を緩めてはいけない」

       ◇

 台風による豪雨で十津川村や五條市大塔町などで大きな被害を出した紀伊水害から間もなく10年。毎年のように各地で川の氾濫や土砂崩れなどが相次ぐなか、水害への備えが重い課題となっている。紀伊水害の教訓を生かした県内の防災の取り組みを紹介する。

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2327600 0 防災のいま 紀伊水害10年 2021/08/31 05:00:00 2021/08/31 05:00:00 2021/08/31 05:00:00 地下に造られた雨水貯留施設。懐中電灯に照らされたコンクリートの柱や天井が、地下神殿のように浮かび上がる(田原本町で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/08/20210830-OYTAI50016-T.jpg?type=thumbnail

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