<下>体験観光 住民も笑顔

スクラップは会員限定です

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

北口さんの畑でとれた野菜(曽爾村で)
北口さんの畑でとれた野菜(曽爾村で)
「もっとたくさんの人に訪れてほしい」と話す北口さん(曽爾村で)
「もっとたくさんの人に訪れてほしい」と話す北口さん(曽爾村で)
大和当帰の収穫体験を提供する田合さん(曽爾村で)
大和当帰の収穫体験を提供する田合さん(曽爾村で)

 曽爾村で始まった体験ツアーなどの取り組みは、住民にも変化を呼び起こしている。

 野菜収穫とピザ作りの体験ができる「BABAガーデン」のオーナー、北口直子さん(65)は「そにのわ GLOCALグローカル 」を通じ、昨秋から観光客を受け入れ、「多くの人が来てくれるのはうれしいけれども、一番楽しんでいるのは私かも」と笑う。

 自宅の畑では、定番のブロッコリーやニンジンから、赤カブの「もものすけ」やビーツといった珍しい野菜まで、20種以上を栽培。ビニールハウスも新設し、訪れた人は折々の野菜を収穫できる。さらに、とれたて野菜をピザ生地に載せて焼くと、オリジナルピザの完成だ。

 村出身の北口さんは高校進学と同時に村を出て以降、三重県名張市を中心に県外で 鍼灸しんきゅう 師として働いていた。父親の看病で4年ほど前に一時村へ戻ったが、「父をみとってから、名張に帰るつもりだった」。

 父親が亡くなると実家の整理のため、庭にあった柿もイチジクも梅も全て切った。同じ仕事をする息子からは「好きなことをしていいよ」と引退を勧められた。それならと、「東京に遊びに行こう」「世界一周旅行にも行きたい」と夢を膨らませたが、程なくコロナ禍に見舞われ、身動きが取れなくなった。

 「私はどうすればいいの」。落胆しかかった時、転機が訪れた。友人やGLOCALの職員と一緒にピザや野菜を焼いているうちに、体験ツアーのプログラムの話がとんとん拍子に進んだ。収穫したばかりの野菜を使ったピザ作りは、村のような地域ならではの体験だった。

 「やると決めたら、おいしいものを」と農業学校に通い、野菜作りも学んだ。訪れた人が掘り出したばかりのニンジンをかじれば、匂いや味に笑みがこぼれる。今は収穫だけでなく、イモの植え付け体験もしている。

 庭先や畑が、大勢でにぎわうのはコロナ禍でもう少し先になりそうだ。けれども、北口さんは「わいわい食べてもらうのは最高でやりがいがある。旅行に行く暇はなくなったけれど、お客さんにはどんどん来てほしい」と前向きに捉えている。

 「村外の人がどう思うのか知りたいし、興味を持ってくれるのはうれしい」と、体験ツアーや商品開発を歓迎するのは、セリ科の大和 当帰とうき や米を栽培している農家の田合完さん(77)だ。

 当帰の畑でツアー客を受け入れるほか、当帰の葉は加工された後、特産品として誕生したトマトソースにも使われている。

 田合さんは長年JAで働きながら、土日は農業に従事する兼業農家だった。現在は薬草生産組合の組合長を務め、当帰やブランド米の栽培に取り組んでいる。

 当帰は健康志向の高まりで注目され、その名の通り、奈良原産とされる薬草だ。初夏から秋にかけての収穫期、田合さんはツアー客を畑で迎え、当帰の摘み取り方を説明。交流に手応えを感じ、「加工品が売れれば、村の経済も回る」と期待する。

 大和当帰の加工や漆工房の作業など、村には観光資源として生かせる営みが、まだ眠っている。村の挑戦は続いている。

(この連載は浜井孝幸が担当しました)

スクラップは会員限定です

使い方
「地域」の最新記事一覧
2975383 0 広がれ!そにのわ 過疎に挑む村人たち 2022/05/06 05:00:00 2022/05/06 05:00:00 2022/05/06 05:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/05/20220505-OYTAI50043-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込みキャンペーン

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)