大衆劇場 コロナ糧に前へ
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クラスター経験 大和高田「弁天座」
劇団員や劇場スタッフら計24人が新型コロナウイルスに感染し、1月に県からクラスター(感染集団)に認定された大和高田市の大衆劇場「弁天座」。運営する高田大劇の取締役・宮崎和久さん(37)が読売新聞の取材に応じ、発生状況や自身も感染した経験を振り返り、「感染対策をしていたが、把握できていない部分もあった。対策を徹底し、大衆演劇の良さを伝え続けたい」と語った。(石山脩平)
再開後苦情も 対策徹底 客の声励みに
弁天座は2005年にオープンした。父の昌明さん(74)が運営会社の社長を務め、母や兄とともに宮崎さんも劇場を支えてきた。地元の人だけではなく、各地から大衆演劇ファンが来館する。感染拡大後は、消毒液の設置、換気の徹底などで対策に取り組んできた。

1人目の感染が判明したのは1月16日午前。上旬から弁天座で上演していた劇団の座長から宮崎さんに電話が入った。「新型コロナにかかってしまった」
その日の昼の上演を急きょ中止し、スタッフが劇場の壁や座席、扉の取っ手など不特定多数の人たちが触った可能性のある物や場所を消毒液で拭き取った。
17日には、劇団員約20人と宮崎さんもPCR検査を受けた。18日までに宮崎さんを含め新たに18人の感染が確認された。

弁天座では上演する劇団が1か月ごとに変わる。期間中、劇団は昼と夜の上演を続け、その間、劇団員は弁天座の楽屋やマンションの一室などで集団生活を送っており、感染が広がった原因とみられている。宮崎さんは、劇団側と打ち合わせで楽屋に出入りする機会が多かった。
宮崎さんは17日午後から38度7分の高熱が出て、翌日昼には三郷町の県西和医療センターに入院。劇団員も、入院や宿泊療養ホテルで隔離された。感染者は観客3人を含め、計24人(10歳未満~80歳代)に広がったが、いずれも軽症、無症状などで済んだ。
保健所から感染対策の内容、舞台から最前列の座席までの距離、置いている消毒液の名称まで細かく聞き取りがあた。劇場側は、消毒液の設置や来場者の検温、館内でのマスク着用などを説明し、2月3日から上演を再開した。
弁天座は、1日約80人の来場者があったが、感染拡大後は半分以下に。今までの預貯金を取り崩しながら運営していた。クラスター発生後、来場者はさらに減り、経営は厳しいという。
社会の厳しい目にもさらされた。「クラスターが出たのになぜ上演しているのか」と苦情の電話や、「道路にもウイルスがついているんじゃないか」といった心ない声も寄せられた。
それでも、「入院中に50件以上も応援の電話やメッセージをもらい、何とか劇場を守ろうと踏ん張っている」と宮崎さんは話す。
現在、最前列の座席を空けて座れなくしたほか、劇団員はなるべく外出を控えるなど、対策の徹底を図っている。2月に上演した「飛翔座」の恋瀬川翔炎座長は「消毒もしっかりしていて、安心して舞台に集中できた」と語る。
宮崎さんは「文化芸術鑑賞の経営はどこも厳しい。いつか光が見えてくることを信じ、お客さんのためにも頑張りたい」と前を向く。
「感染者攻撃 あるべきでない」
2月に陽性 中谷・生駒市議会議長
2月に新型コロナウイルスに感染した生駒市議会の中谷
陽性が分かったのは2月9日。感染者と会食し、濃厚接触者としてPCR検査を受けた。無症状だったが、高齢で持病があるため、入院した。「いつ急変するか不安だった。健康のありがたさがわかった」と振り返る。
市議会では昨年8月、議員が感染した場合は、氏名を公表することを申し合わせていた。公職に就いている議員として、注意喚起を促すなどの理由からだ。
しかし、それが良かったのかと今では迷う。偏見の目で見られ、「寂しい気持ち。感染したくてなった人はいない」と訴えている。