全員で挑む 選抜<上> 勝利 自分のバットで
完了しました
智弁学園 三垣 飛馬選手 2年

春が近づく智弁学園のグラウンドに、選手たちの元気な声が響く。その中でも、人一倍大きな声でチームをもり立てるのが一塁手の三垣
入学直後から長打力を買われていたが、伸び悩んだ。その傍らで、プロ注目のスラッガー前川右京や主将の山下陽輔、投手の西村王雅、小畠一心の同級生4人は、1年からどんどん活躍していく。出場できない三垣は、焦りばかりが募った。
チャンスが巡ってきたのは、新チームで迎えた昨秋の県大会。6番などを任され、「負けられない」と力が入った。だが、バットが思うように振れず、5試合で6安打3打点に低迷した。
チームも決勝で天理の前に力尽きた。3番・前川、4番・山下が塁に出ても後が続かない。三垣も6点を追う八回一死二、三塁の好機を内野フライで凡退。チーム全体で9安打を放ったが、ちぐはぐな攻撃で2得点どまり。頼みのエース西村も崩れ、8失点を喫した。
三垣は痛感した。「4人に頼ってばかりいては勝てない」。5番を打つ
小坂
わずか2週間後に始まった近畿大会は、選手たちの姿が見違えていた。
「どんな不細工なあたりでもヒットはヒット。どんな形でもいい。チームのために」。そんな思いで臨んだ三垣は、強豪相手に4試合で7安打8打点と大躍進。市和歌山戦、大阪桐蔭戦では先制の長打を放ち、チームを勢いづけた。
打線もつながった。6~9番の下位打線が放った1試合あたりの安打数は、県大会は3・4だったが、近畿大会では4・8にまで伸びた。試合ごとにヒーローが生まれ、4試合で計49安打28点を挙げ、投手の力投を支えた。
県大会の敗戦は、誰もが活躍できるチームに成長させた。三垣は「グラウンドの9人、ベンチの18人、部員全員で戦って勝ちたい」と意気込む。どの選手も「チームのために」と口をそろえる智弁学園。チーム全員での日本一を目指す。(敬称略)
◇
19日に開幕する第93回選抜高校野球大会に県内から智弁学園と天理の2校が出場する。両校とも1年から試合に出場している選手たちがチームを引っ張る一方で、負けじと奮起した選手たちがいる。挫折を乗り越え、成長した選手を通してチームの強さを紹介する。
智弁学園の横顔 智弁学園は1965年に創立され、野球部も同年に設立。選抜大会は2年連続14度目の出場で、2016年に優勝した。昨秋の近畿大会は、決勝で大阪桐蔭を破り、9年ぶりに優勝した。
攻撃は中軸の前川、山下が、昨秋の県大会と近畿大会で計27安打、4本塁打を放ち、力強い。投手陣も変化球が持ち味のエース西村とストレートに力がある小畠を中心に層が厚い。