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<東日本大震災10年>いわきの原風景 彫り刻む

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愛犬など題材17点 「生きる喜び 伝えたい」

手斧でたたいて作品を削り出す安藤さん(天理市で)
手斧でたたいて作品を削り出す安藤さん(天理市で)
福島をイメージした女神像などが展示された会場(奈良市で)
福島をイメージした女神像などが展示された会場(奈良市で)

 東日本大震災で被災し、福島県いわき市から奈良に移住した彫刻家安藤栄作さん(59)の個展が、9日から奈良市西寺林町のギャラリー勇斎で始まった。会場には、被災前のいわき市の豊かな自然などを表現した作品17点が展示。安藤さんは「自分の中で宝物となっている、福島県の海や山、雲などを表現することで、生きる喜びを伝えたい」と願う。(土谷武嗣)

 

被災後移住 安藤さん個展

 会場には、創作活動で過ごしたいわき市の山やサーフィンをした海、子どもが通った小学校の校舎などが並ぶ。手斧ておので丸太を繊細に削り出した作品が多く、福島の海の女神をイメージした作品や、世話になった人を表現した「王と王妃」、津波に流された愛犬などの作品も展示されている。

 東京都墨田区生まれ。東京芸術大彫刻科を卒業後、埼玉県春日部市でアルバイトしながら暮らしていたが、29歳で豊かな自然を求めていわき市に移住した。

 2011年3月11日、妻と長女と一緒にいわき市内のショッピングセンターで買い物していたとき、激しい揺れに襲われた。海岸沿いにあった自宅兼工房に、戻ることはできず、家族と車中で一夜を明かした。翌日、福島第一原発事故を知り、新潟県内の妻の実家へ避難した。

 約1か月後に帰宅すると、自宅は津波で跡形もなくなっていた。10年以上飼っていた愛犬ユイと数百あった作品は全て流されてしまった。11年5月、仏像彫刻が多く残り、歴史豊かな奈良に住むことを家族で話し合って決め、明日香村に移住した。12年11月には天理市に印刷所を改装した自宅兼工房を構えた。

 安藤さんは3種類の手斧を使い分け、ヒノキやクスノキなど様々な種類の丸太をたたき、作品の形を削り出す。「ゴン、ゴン」と鈍い音が響く工房には、木の爽やかな香りが漂う。完成した作品は荒々しい質感が特徴的で、17年には彫刻界で権威ある「平櫛田中ひらくしでんちゅう賞」を受賞した。

 震災後は「風化を防ぎたい」との思いから、原発事故や震災への悲しみなど負のエネルギーをテーマに作品を作ってきた。

 しかし、震災から10年を前に、昨春初めて、津波で流された愛犬の姿を作品にした。「被災地から逃げたという後ろめたさを抱えてきた。福島に残してきた震災前の日常を創作のテーマにしてみよう」と決めた。

 安藤さんは「震災は様々な悲しみを生み出したが、普段は出てこない人間の中にある真心や愛情も感じることができた。それを表現し続けることで、次の世代に、人間が存在する上で大切な生きる希望や喜びのようなものを届けたい」と前を向く。

 ■奈良で21日まで

 21日まで。月曜休み。午前11時~午後6時(最終日は4時)。問い合わせはギャラリー勇斎(0742・31・1674)。

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1899276 0 ニュース 2021/03/10 05:00:00 2021/03/10 11:15:29 2021/03/10 11:15:29 手斧でたたいて作品の形を削り出す安藤さん(天理市で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/03/20210310-OYTNI50003-T.jpg?type=thumbnail

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