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正倉院の筆 高い実用性

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正倉院宝物の筆。実用性が高いと判明した(「正倉院紀要第43号」から)
正倉院宝物の筆。実用性が高いと判明した(「正倉院紀要第43号」から)
正倉院宝物の筆の内部構造(画像を一部修整しています)(「正倉院紀要第43号」から)
正倉院宝物の筆の内部構造(画像を一部修整しています)(「正倉院紀要第43号」から)
光明皇后が書写した「杜家立成」の一部。字に沿って所々に線が見られるのは、巻筆の特徴だと判明した(「正倉院紀要第43号」から)
光明皇后が書写した「杜家立成」の一部。字に沿って所々に線が見られるのは、巻筆の特徴だと判明した(「正倉院紀要第43号」から)

5種類再現 書家ら検証

疲れない■用途で使い分け

 独特の形状や豪華な装飾から「鑑賞用」とも考えられてきた奈良・正倉院の宝物筆(正倉院筆)は、実は高い実用性と機能性を備えていたことが、筆作りの専門家や書家による実証研究で明らかになった。宮内庁正倉院事務所が研究成果をまとめた「正倉院紀要第43号」で発表した。(西田朋子)

「書の歴史の起点 重要」

 正倉院には18本の筆が伝わる。いずれも現在の毛筆(毛のみで穂をつくる無芯筆むしんひつ)とは異なり、芯になる毛を紙で巻き、さらに毛と紙を交互に数段巻く「巻筆まきふで有芯筆ゆうしんひつ)」という製法による。軸には珍しい竹が使われ、直径14~31ミリと太く、象牙や金銀で装飾されていることから、その実用性を巡っては判断が分かれていた。過去に行われた材質調査で、使われている毛はウサギ、鹿、タヌキなどの毛であることが判明している。

 2016年から4か年をかけて特別調査を行い、X線撮影、マイクロスコープによる観察などで詳細な内部構造と、巻紙の材質などを明らかにした。

 これらの成果をもとに、滋賀県高島市の製造筆業・藤野雲平さん(71)と、広島県熊野町の同・向久保健蔵さん(72)が、宝物筆のうち5種類を精密に再現。

 3人の書家が実際に使ってみて、文字の完成度や書き手の疲労度、筆の性能(腰、墨含み)などを検証した結果、正倉院筆は十分に実用性を備えており、▽紙で締めているため弾力があり、線の太さや細さを表現しやすい▽重心が低いため、細い筆よりかえって疲れない▽材質や形状によって用途を使い分けていた――などの結論を得た。

 正倉院の書跡で、太い線に沿って時々みられるかすかな線は、毛先の割れによるものではなく、巻筆の構造に伴う特徴であることもわかった。巻筆は、書ける範囲が先端から5~10ミリ程度で、芯を支える外側の毛が線に影響することがあるという。

 書家の荒井利之氏は、正倉院紀要に収められた別の論文で、聖武天皇、光明皇后の書をはじめ、「国家珍宝帳」(東大寺大仏に献納した聖武天皇遺愛品のリスト)、正税帳や戸籍まで、正倉院に伝わる書跡、文書で幅広く、巻筆ならではの線の特徴を確認したと報告している。

 大東文化大非常勤講師で墨、すずり、筆、紙に詳しい日野楠雄なんゆう氏(60)は、「8世紀の筆の現物は中国にも残っておらず、日本でも正倉院の筆の後は江戸時代まで確認することができない。正倉院筆の構造と機能にかかわる知見は、日本だけでなく、東アジアの筆の歴史、書の歴史を考える起点となるもので大変重要だ」と話している。

細く腰のある毛選ぶ…巻筆作り担う 藤野さん

 巻筆は、江戸時代終わり頃に現在の毛筆が急速に普及するまで、様々な場面で使われていたが、その製法を現在も継承するのは藤野雲平さんで15代目を数える「攀桂堂はんけいどう」だけとなった。

 攀桂堂は約400年前、江戸時代初めの元和年間に京で創業し、御所や公家に筆を納めてきた。今も主に写経用に年間300~500本を製造している。

 正倉院筆は極めて完成度が高く、藤野さんは「芯毛に着せてある毛が、非常に薄い。顕微鏡で拡大すると、細く腰のある良質な毛をよりすぐって使っていることがわかった」と驚いていた。

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2013279 0 ニュース 2021/04/27 05:00:00 2021/04/27 05:00:00 2021/04/27 05:00:00 正倉院宝物の筆(第13号)(「正倉院紀要43号」から) https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/04/20210426-OYTNI50046-T.jpg?type=thumbnail

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