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奈良博・井上新館長に聞く

「奈良博はお行儀がよく、おとなしいイメージ。もっと元気を出していきたい」と語る井上館長(奈良市で)
「奈良博はお行儀がよく、おとなしいイメージ。もっと元気を出していきたい」と語る井上館長(奈良市で)

 奈良国立博物館(奈良市)の館長に、東京国立博物館副館長を務めていた井上洋一さん(64)が4月1日付で着任した。就任後の感想や今後の抱負などについて聞いた。(聞き手・関口和哉)

将来的には海外交流展

 関東で生まれ育ち、関西で暮らすのは初めて。学生時代、飛鳥や山辺の道を歩き、東京国立博物館時代も展示のため奈良の寺社を訪れてきたが、いざ暮らしてみると、まだ関西のイメージはつかみきれていない。

 ただ、私にとって奈良は古代を身近に感じさせてくれる場所。奈良の寺院に接するうち、奈良時代、国を挙げて仏教を中心とした国家形成にあたっていたことを、より強く感じられるようになってきた。

 考古学が専門で、銅鐸どうたくを中心とする弥生時代の青銅器文化を研究し、シリアなど西アジアの遺跡で発掘調査や保存修復にも携わってきた。

 藤ノ木古墳(斑鳩町)や黒塚古墳(天理市)など、県立橿原考古学研究所が中心になって実施してきた素晴らしい古墳調査も、実際に現場を見ているので、他の地域に比べて奈良への思い入れは深いと思う。

 現在、開催中の特別展「聖徳太子と法隆寺」(6月20日まで)は、聖徳太子1400年遠忌おんきの記念にふさわしい、圧巻の内容だ。できる限り多くの人に見てほしいが、新型コロナウイルスの感染拡大もあり、そう言いにくいのが最も苦しいところ。入館者数が減少し、運営は厳しい状況が続く。コロナ禍が一段落するまで耐えるときだ。

 医師や看護師は人の命を守るが、文化の力、博物館の力は人の心を守ることができると信じている。人は心が折れたら社会生活が営めなくなってしまう。今だからこそ、奈良博でなくても、博物館や美術館を訪れて心を癒やしてほしい。

 奈良博は「静かなる仏教美術の聖地」だと思っている。多種多様なコレクションがあり、それらを展示する特別展「奈良博三昧ざんまい―至高の仏教美術コレクション」(7月17日~9月12日)を開く。優品は仏教美術にとどまらず、縄文土器や銅鐸まであり、一般の方々に知ってほしい。

 また、現状では海外交流展は難しいが、将来的には中国や韓国以外の海外の文物を扱う展覧会も開きたい。それが、これまでの奈良博の殻を破ることにつながる。海外交流展ができない今は、国内の博物館、美術館とのネットワークを充実し、複数の館と共同展を開くことも検討したい。

 コロナ禍で厳しい状況だからこそ、なぜ、博物館が文化財を収集、保管、展示するのか、その基本に立ち返りたい。博物館が存続するには、一般の人の理解にかかっている。わかりやすい言葉でどれだけ深く語れるのか。研究員一人一人の底力が問われている。

        ◇

 いのうえ・よういち 1956年、相模原市出身。国学院大卒、同大学大学院文学研究科日本史学専攻博士課程後期単位取得。85年、東京国立博物館に入り、同博物館学芸企画部長、九州国立博物館学芸部長などを歴任。趣味は「安くておいしいワインでおいしいものを食べること」。

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2088586 0 ニュース 2021/05/31 05:00:00 2021/05/31 05:00:00 2021/05/31 05:00:00 「奈良博はお行儀がよく、おとなしいイメージ。もっと元気を出していきたい」と語る井上館長(奈良市で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/20210530-OYTNI50036-T.jpg?type=thumbnail

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