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<紀伊水害10年>「復興の象徴」 水車再建

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十津川の老舗温泉旅館

壊れて朽ちた露天風呂の水車(4月19日、十津川村で)
壊れて朽ちた露天風呂の水車(4月19日、十津川村で)
露天風呂に水車の部材を仮置きする作業に臨む(左から)植村さんや上垣さんら。後方はダム湖の水面で、紀伊水害では露天風呂の屋根が沈むまで水位が急上昇した(8月20日、十津川村で)
露天風呂に水車の部材を仮置きする作業に臨む(左から)植村さんや上垣さんら。後方はダム湖の水面で、紀伊水害では露天風呂の屋根が沈むまで水位が急上昇した(8月20日、十津川村で)

 2011年9月の紀伊水害で被災した十津川村の老舗温泉旅館で、水没して壊れた露天風呂の水車が復活する。「復興の象徴に」と、新たな水車作りに奔走したのは、68年前の豪雨で祖父を亡くした大阪府の男性だった。(中井将一郎)

大阪の男性 支援呼びかけ実現

 村南部の二津野ダム湖畔に立つ1924年創業の旅館「湖泉閣吉乃屋」。水車は50年近く前、アイデアマンだった先代の植村 恒司ひさし さんが設けた。源泉から引いた温泉で回る風情ある水車は、宿泊客に好評だった。

 紀伊水害では、大雨でダム湖の水位が5メートル以上上昇。露天風呂や庭が水没し、水が引いた後は数十センチの泥で覆われた。水害の前年に亡くなった恒司さんの後を継いだ賢一さん(52)は泥を撤去し、2か月後に営業再開にこぎ着けた。しかし、泥につかった水車はほとんど動かず、やがて朽ちた。

 水車再建のきっかけは昨年6月。新型コロナウイルスの緊急事態宣言が解除されたばかりで、客が少ない旅館に宿泊した大阪府八尾市の美容師上垣隆幸さん(57)が、がらんとした露天風呂につかりながら気づいた。「子どもの頃から親しんだ水車の『バシャン』という音がない」

 上垣さんの祖父・清弘さんは旅館近くで理髪店を営み、1953年7月の南紀豪雨で、濁流にのまれて亡くなった。残された一家は、大阪に移り住んだが、上垣さんは子どもの頃から墓参りなどで村を訪れると、吉乃屋に泊まっていた。

 旅館は水害の爪痕を感じさせなくなっていたが、大切なものが欠けていた。「水車を復活させ、復興の象徴にしよう」と、賢一さんに提案した。

 木材を曲線に切り、バランスよく組み立てる技術が必要で、新しく作るには数百万円がかかると知り、一度は諦めかけた。だが、知人の大工を何度も口説いて計画に参加してもらい、熱意に感銘を受けた会社経営者から資金提供も取り付けて、再建にこぎ着けた。

 ベニヤ板で実物大の模型を作り、8月中旬に木材の加工がスタート。5日、ほぼ元通りの直径1・5メートルの水車を組み上げる予定だ。

 紀伊水害後、上垣さんは村産のキノコを大阪の飲食店に売り込んだり、村で無料の寄席を開いたりして復興支援に努め、毎年9月には村内の被災地を歩いて慰霊してきた。水車の完成を前に、「十津川のために人がつながり、実現できた。十津川は元気だと知ってもらえれば」と意気込む。

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2339169 0 ニュース 2021/09/04 05:00:00 2021/09/04 05:00:00 2021/09/04 05:00:00 壊れて朽ちた露天風呂の水車(4月19日、十津川村で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/09/20210903-OYTNI50042-T.jpg?type=thumbnail

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