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<紀伊水害10年>復興のシャッター 何度でも

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川西・森川さん撮影

県南部を巡り、写真を撮影する森川さん(川西町で)
県南部を巡り、写真を撮影する森川さん(川西町で)
森川さんが撮影した十津川村の盆踊り「大踊」の写真(2013年8月撮影、森川さん提供)
森川さんが撮影した十津川村の盆踊り「大踊」の写真(2013年8月撮影、森川さん提供)

 2011年9月の紀伊水害で被災した県南部に通い、水害の傷痕や復興の様子、人々の暮らしを写真に残し続ける男性がいる。撮影枚数は約5000枚。趣味の撮影を通じ足しげく通っていた地域の被害に心を痛めたが、「自分の愛する土地の魅力を多くの人に伝え、少しでも復興に役立てれば」とシャッターを切り続けてきた。(岡本与志紀)

5000枚 魅力伝え発展の力に

 川西町の自営業森川光章さん(64)。生まれも育ちも川西町だが、高校時代に写真撮影を始めると、被写体を求めて県南部に出向くように。澄んだ川水や季節ごとに違う顔を見せる山々など原風景が残り、そこで手を取り合って暮らす人々に魅了された。

 妻・多津子さん(60)の故郷・川上村での大滝ダム建設が、さらにのめり込むきっかけとなった。試験貯水が行われた03年、地滑りが発生。多津子さんの実家を含む37戸が立ち退きにあった。「全部なくなっちゃった」とアルバムをめくる妻の姿を見て、「過疎地では故郷が失われることもある。人々の暮らしや風景を写真に残そう」と心に決めた。

 特に愛着を深めたのは十津川村だった。玉置山から望む雲海や、イワナなど新鮮な川魚を使った郷土料理にひかれた。月に3回以上通い、村民とも酒を酌み交わすほどになり、十津川は「もう一つの故郷」になった。

 紀伊水害では、そんな〈故郷〉も被災した。食料を手に支援に駆けつけて目にしたのは、土砂に埋もれた家や、行方のわからない家族を捜す人々の姿。「こんなに簡単に失われてしまうのか」と立ち尽くした。カメラも持参したが、写真は一枚も撮れなかった。

 以来、南部での写真撮影は控えるように。しかし、ある時、肩を落としがちだった森川さんに、多津子さんが声をかけた。「土地が傷ついても、そこに人が暮らしているなら、写真として記録する意味はあるわよ」。背中を押されるように、被災地へ向かった。約1年後のことだった。

 最初に撮影したのは、斜面が地中深く岩盤ごと崩れる「深層崩壊」で生じた十津川村栗平地区の「土砂ダム」。今でも、 防堰ぼうえん 堤などの工事が施され、大雨の度に土砂が下流へ流入するという。「現地の様子は9年前とほぼ変わらない。あの災害はまだ終わっていない」と語る。

 復興を象徴する写真もある。300年以上の歴史がある十津川村の盆踊り「 大踊おおおどり 」。村のお年寄りが子どもに伝統の曲と踊りを教えているといい、「災害後に引っ越した知人もいる。町並みも大きく変わった。でも、変わらずに受け継がれるものもある」とシャッターボタンを押した。

 数年前に、奈良市内で展覧会を開いた際には、大踊の写真を見た十津川村出身の高齢男性から「小さい頃を思い出した。懐かしい風景を伝えてくれてありがとう」と伝えられたという。

 県南部に通っていると、増えていく耕作放棄地や空き家を見てさびしく思うこともある。それだけに、活性化に役立ちたいという思いは強い。「自分の写真を展覧会や雑誌で伝え、県南部の魅力を多くの人に知ってほしい。そして興味を持った人が移住し、発展に協力してもらえれば」

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2346180 0 ニュース 2021/09/07 05:00:00 2021/09/07 05:00:00 2021/09/07 05:00:00 県南部の地域を巡り、地域の自然風景や文化を写真で記録する森川さん(川西町で)=岡本与志紀撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/09/20210906-OYTNI50070-T.jpg?type=thumbnail

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