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選挙での訴えがどれだけ有権者の心に届くかは、話し方やジェスチャーも重要な要素だ。参院選新潟選挙区(改選定数1)に立候補した4人が公示日(22日)に行った街頭演説を、「できる人の『会話術』」(学習研究社)などの著書がある心理カウンセラー安堂達也さん(61)(栃木県足利市)に分析してもらった。
立候補者 届け出順 改選定数1候補4
遠藤 弘樹 42 諸新
越智 寛之 48 N新
森 裕子 66 立現
小林 一大 49 自新
■見た目の印象
遠藤弘樹氏(諸派)
(新潟市中央区八千代の新潟伊勢丹前での第一声)
黒スーツ、白い手袋とワイシャツ姿に、ネクタイはオレンジと、タスキやのぼりの色に合わせた。印象的で、氏名などがわかりやすい。左手のジェスチャーをもっと多用したい。
越智寛之氏(N党)
(新潟市中央区新光町の県庁前での第一声)
まっすぐと立ち、マイクを握りしめて体は微動だにしない。視覚的にはやや迫力不足か。黒のスーツ、白のワイシャツ、黒系のしま柄のネクタイ姿。印象は地味だが、実直。
森裕子氏(立民)
(新潟市秋葉区新津のスーパー前での街頭演説)
全身純白のスーツ姿に、ピンクのタスキが映える。道行く人に大きくアイコンタクトし、右手のジェスチャーが巧みだ。話題を補う賃金低下のグラフパネルも説得力につながった。
小林一大氏(自民)
(阿賀野市保田のスーパー前での街頭演説)
黒のチノパンツ、青の半袖ポロシャツに紺のタスキ。ジェスチャーも豊富で、素手に黒の腕時計、短髪姿は若々しさと親近感を印象づける。背景に掲げる笑顔入りののぼりが印象的だ。
■何が伝わったか
遠藤氏
周囲を見回し、「一人一人が政治に参加する参政党」とアピール。食・健康・国防を未来の子供たちに良い状態で引き継ぎたいと語る。体験を基に、主体性をスポイルした戦後教育を批判し、日本人の誇りと精神性の伝承、正しい情報獲得の必要性を訴えた。話題は広範だが、目指すは自主独立と真の幸福。「私は正直に生きたい」と
越智氏
年金生活者のNHK受信料の無料化と、若者へ受信料不払いを訴えた。シンプルな訴えでインパクトを残すためには、訴えるテーマに対する深掘りと県民が納得できる理由づけが不可欠。記者からの質問に答える形で演説を続けたが、回答にも主たる訴えに帰結できるような理論展開が必要だ。支持を集めるためには、さらなる理論武装が必要であろう。
森氏
冒頭で聴衆へのねぎらいと感謝の言葉を忘れない。演説の抑揚と強調点が明確であり、巧みな表現力と情熱が印象的。選挙戦を「壮絶な戦い」とし「民主主義と平和」を守り、「安心して豊かに生活できる社会」への期待に応えたいと熱く語る。物価高をアベノミクスの負の遺産とし、県民を守る姿勢を印象づけた。滑舌の良い名調子が続き、定刻を惜しみつつ退場した。
小林氏
県議4期15年の経験を地域の課題解決に生かしたいと訴えた。経済の不透明感は増しており、経済活動を新型コロナウイルス禍前に戻さねばならないと語る。経済対策ができるのは自民党しかなく、国民の生命と財産を守り、ライフステージに合った施策で、各種の地域課題解決を前に進めたいと力説。「知名度が足りない」「本当に厳しい戦い」と強調し、支援を求めた。
■アドバイス
遠藤氏
首を振り過ぎるので、一つのフレーズを言い切るまでは視点を動かさないように話すと迫力が出る。
越智氏
語りを熱く。演説では義憤とするNHKへの怒りを心中で燃やし、口内から炎を吐くがごとく語るべし。
森氏
前髪を上げ表情を明るく見せながら、演説中も笑顔を印象づけて「うなずきの間」を取り入れたい。
小林氏
左右の聴衆へのアイコンタクトを意識し過ぎず、ふらふらせずに胸を張り、信頼感を訴えかけるとよい。
あんどう・たつや 1961年5月生まれ、栃木県足利市出身。劇団を主宰し、俳優、劇作家、演出家として10年間活動。95年、「安堂プランニング」を創業し、対人コミュニケーションの指南を開始する。同社代表取締役のほか、信頼を高める対人表現とコミュニケーションイメージ向上の指導を行う幼稚園経営コンサルタント、保育者向け職場研修講師、幼稚園研修ドットコムのサイト運営責任者を務める。著書に「園児を集める49のヒント」「保育者のための早わかり連絡帳の書き方ハンドブック」(民衆社)など。