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    日本で一番短い路面電車 4.7km

     ◇市民の足 今も進化中

     カタン、カタン――。岡山市の中心部を軽快な音を立てて走る路面電車。岡山電気軌道の「東山線」と、「清輝橋線」の2路線があり、その総営業距離は計4・7キロ。実は、現存する中で「日本で一番短い路面電車」だ。戦災や自動車の普及にも負けず、歴史は100年を超え、通勤通学や観光客の移動手段として、今も多くの人たちに親しまれている。(望月尭之)

     ■1912年開業

     国内初の路面電車は1895年に京都市で誕生。各地で次々と開業するなか、岡山の路面電車は、民間鉄道「山陽鉄道」(神戸―下関)を造った神戸の資本家らが計画。1912年5月5日に岡山駅前を起点に開業すると、21年には市民の強い要望で452メートルが新たに敷設されるなど、距離を延ばしていった。

    • 昭和20年代に撮影された「岡山駅前」乗り場(社史「おかでん七十年の歩み」より。岡山電気軌道提供)
      昭和20年代に撮影された「岡山駅前」乗り場(社史「おかでん七十年の歩み」より。岡山電気軌道提供)

     34年には室戸台風による水没被害に遭い、45年6月29日の岡山空襲では架線柱がほぼ全焼。幸いにも本社と車庫は焼失を免れたため、空襲から70日余りで運行を再開でき、戦後復興のシンボルとして人々を勇気づけ、46年には大雲寺町(現・大雲寺前)―清輝橋の537メートルが延伸された。

     しかし、60年代になるとモータリゼーション(車社会化)の波が押し寄せ、赤字区間の900メートルが廃止に。全廃を求める声も上がったが、松田壮三郎社長(当時)が「低運賃の庶民の乗り物として絶対に残すべき」と猛反対。存続したのが、現在の東山線と清輝橋線だ。

    • バリアフリー化した超低床型の路面電車「MOMO」
      バリアフリー化した超低床型の路面電車「MOMO」

     ■5分間隔

     日中は東山線は5分、清輝橋線では10分おきに運行。朝のラッシュ時には東山線は約4分間隔になるが、満員で乗り切れず、1本見送る利用者も多い。

     孫に会うため、週3回ほど東山線に乗るという岡山市南区の無職犬飼良博さん(71)は「本数が多く、待ち時間を気にせずに利用できるので、とてもありがたい」と話す。

     全国路面電車ネットワークの岡将男・運営委員長(62)は「市の中心部は路面電車があったから沿線が発展し、短い距離でも市民の足として定着した。気軽に乗れるのも魅力」と、愛され続ける理由を分析する。

     ■100メートル延伸計画

     お年寄りらが利用しやすく、環境にもやさしい点などが再評価され、都市交通のモデルケースとして注目を集めつつある路面電車。岡山でも利便性向上のため、JR岡山駅から路面電車への直接乗り入れ計画が進められている。

     電停を駅前広場に新設することで、市は中心市街地の活性化や回遊性アップにつながるとしている。駅前の交通渋滞などの課題もあるが、岡山の玄関口の新たな顔として期待される。

     実現すれば約100メートル延伸されるが、日本一短いことに変わりはないという。

    2016年11月27日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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