5億円遠く 知恵絞る

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瀬戸内市役所に掲げられた里帰りプロジェクトの懸垂幕とのぼり
瀬戸内市役所に掲げられた里帰りプロジェクトの懸垂幕とのぼり
国宝「山鳥毛」(2017年5月、県立博物館で)
国宝「山鳥毛」(2017年5月、県立博物館で)

 ◇瀬戸内市「山鳥毛里帰りプロジェクト」

 瀬戸内市が国宝「太刀 無銘一文字(山鳥毛やまとりげ)」の購入を目指して始めたプロジェクトへの寄付金が半月で5000万円近くになった。ふるさと納税制度を活用したクラウドファンディング(CF)などの方法で資金調達を進めているが、目標の購入費5億円までは遠く、市は返礼品を充実させたり、シンポジウムを開催したりして、PRに力を入れている。(水原靖)

 

 「市内外から多くの寄付をいただいている。今後も引き続き、協力を募っていきたい」。瀬戸内市の武久顕也市長は16日、取材に対し、手応えをにじませた。

 市によると、今月1日から募集を始めた「山鳥毛里帰りプロジェクト」には15日現在、約500件の入金手続きがあり、4953万6595円の寄付が集まった。近年の「刀剣ブーム」もあって、市民や刀剣愛好家らが寄付のために市役所などを訪れており、中には100万円を持参した人もいたという。

 市は、寄付額に応じて用意した約230点の返礼品を特設サイトに陳列。刀匠が制作した太刀や脇差し、ペーパーナイフのほか、山鳥毛の模倣刀などもあり、入手可能な個数を「残り1個」などと表示して取得意欲を後押ししている。

 17日には市内で山鳥毛に関するシンポジウムを開催。戦国時代史研究の第一人者、小和田哲男・静岡大名誉教授は、購入の意義について「技術の伝承につながり、若い人たちへの教育的効果も期待できる」と強調し、武久市長は「購入による経済的効果も行政は考えている」などと訴えた。

 このほか、プロジェクトを応援するサポーターを募集し、SNSや口コミで知り合いに寄付を呼びかけてもらう取り組みも始めている。サポーターには研修会で基礎知識を習得してもらうほか、山鳥毛の展示会を開催する場合には特別優待券を贈呈するという。

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 瀬戸内市長船町は、鎌倉から室町時代にかけて「鍛冶屋千軒」と呼ばれるほど、多くの刀匠が居住した。砂鉄の産地である中国山地から、吉井川の水運により原料が持ち込まれたためといい、「備前長船」の銘が入った刀を持つことは、武士の誇りだったとされる。

 中でも、刃文が山鳥の羽毛に似ていることから名付けられた山鳥毛(刃長79・5センチ、重さ1・06キロ)は、戦国武将・上杉謙信が愛用したと伝わる名刀で、専門家は「力強さや華やかさは日本刀の中でも最高傑作」と評価する。

 今年1月、県内に住む山鳥毛の所有者から市に売却話が持ちかけられ、6月の市議会で購入方針を決定。市内の備前長船刀剣博物館には、国宝・重文の刀剣が一振りもなく、学芸員は「来館者の増加だけでなく、他の国宝との合同展示など企画の幅も大きく広がると思う」と期待を寄せる。

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 ただ、5億円という購入価格の妥当性について、疑問視する声もある。市は外部評価委員会の意見なども踏まえ、「経済波及効果も含め5億円以上の価値がある」との立場だが、市民からは「いくら寄付とはいえ、それだけの大金を使って購入する必要があるのだろうか」といった懸念も聞かれる。

 山鳥毛を巡っては、謙信ゆかりの新潟県上越市が2016年から「謙信公の遺品を取り戻そう」と寄付を募るなどして3億2000万円で取得しようとしたが、5億円を希望する所有者と折り合いがつかず、断念した経緯がある。この際、市は寄付金約7300万円のうち1100万円を返金したという。

 瀬戸内市は、目標価格に到達しなかった場合について、「まだ何も決めていない」としているが、果たしてどうなるか――。CFの期日は来年1月末、企業版ふるさと納税は同3月末に設定されている。

<クラウドファンディング>

 英語のクラウド(群衆)とファンディング(資金提供)を組み合わせた造語。新規事業や社会貢献などの企画をインターネット上などで示し、賛同者から出資を募る。専用サイトで、事前に目標額や募集期間などを設定し、呼びかける。国内では東日本大震災後、ボランティア活動などの資金集めの手段として広がった。

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49984 0 NEWS EYE 2018/11/18 05:00:00 2018/11/18 05:00:00 庁舎に掲げられたプロジェクトを知らせる懸垂幕(後方)とのぼり(瀬戸内市役所で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181117-OYTAI50004-T.jpg?type=thumbnail

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