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獣害の今 革雑貨で伝え

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「商品ができるまでのストーリーを知って、大切に使ってほしい」と話す頼本さん(岡山市北区で)
「商品ができるまでのストーリーを知って、大切に使ってほしい」と話す頼本さん(岡山市北区で)

建部獣皮有効活用研究所 頼本 ちひろさん 38(岡山市北区)

 岡山市の北端にある建部町地区で、野生のイノシシやシカの皮を使い、名刺入れやアクセサリーなどの雑貨を製作している。野生動物の肉は「ジビエ」として人気が広がっているものの、皮は廃棄されることが多いといい、「いただいた命を大切に使いたい」と話す。

 東京都東久留米市出身。手先が器用で、高校生の頃には趣味でアクセサリーや洋服を作っていた。一方で理系分野に関心があったことや「いつかは起業したい」という思いもあり、東京農業大に進学し、流通経済などを学んだ。

 大学3年生の時、先輩たちが大学で学んだ内容と関係ない進路先を選んだのを見て、違和感を覚えた。「私が本当にやりたいことって何だろう」。洋服作りを仕事にしようと決め、大学を中退して服飾専門学校に入学。卒業後は都内の複数の店を転々としながら、洋服修理やウェディングドレスのオーダーメイドなどの仕事をしていた。

 獣害の問題を考えるようになったのは2015年頃。東日本大震災を機に夫や子どもと京都府福知山市に移住し、イベントで猟師の話を聞いたのがきっかけだった。国道でイノシシが車にはねられるなどの様子を見聞きしていたが、自分自身が獣害にあったことはない。田畑を荒らす動物が捕獲されることに対し、「仕方がない」と受け止めつつも、「かわいそう」という思いを捨てられなかった。

 「なんでそんなに猟をするんですか」。問いを投げかけると、猟師はぽつりぽつりと話してくれた。ニホンオオカミが絶滅したためにイノシシやシカが増えすぎていること、囲いを作っても破られたり飛び越えられたりして困っていること、木の皮まで食べるので山が丸裸になったところもあること――。「捕獲した肉はできるだけ食べる。いただいた命だから」。

 「皮はどうなさるんですか」。質問を重ねると、猟師は「どうにもならん」と気まずい顔をした。野生動物の皮は個体差もばらばらで傷や穴があり、加工が難しく、多くが廃棄されている現状を知り、「もったいない」と活用の道を探ることにした。

 早速猟師にかけあってイノシシの皮を譲り受けた。こびりついた肉や脂をそぎ落とし、自力でなめすが、スルメのように固くなるなど、思うようにいかなかった。16年、夫が岡山市の地域おこし協力隊に選ばれたのをきっかけに建部町に移住。野生動物の皮を扱う加工業者に出会ったことを機に商品作りにこぎ着け、19年から事業として始動した。

 オンラインショップでの販売のほか、イベントなどで対面販売をしている。はじめは怪訝けげんな顔をする人も、獣害のことを説明すると、「いいね」と喜んでくれた。「駆除した動物の命を大切に使うという意義を知れば、商品も大切に使ってもらえる」と手応えを実感する。

 「野生動物の革は軽く、水にぬれても乾きやすいので普段使いしてほしい」という。シカ革は「革のカシミヤ」ともいわれるほど、柔らかな手触りが特徴。イノシシ革は傷に強くワイルドな風合いで、男性にも人気だという。

 最近はマスクのゴムひもに装着して耳の痛みを軽減させるマスクバンドなど「新しい生活様式」に沿った商品の開発を進める。新型コロナウイルス感染拡大の影響でイベントの機会は減ったが、オンラインで一緒に雑貨を作るワークショップが人気だという。「これからも多くの人に、獣害の現状やジビエレザーの魅力を伝えたい」と意気込む。(坂下結子)

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1826397 0 人あり 2021/02/08 05:00:00 2021/02/08 05:00:00 「商品ができるまでのストーリーを知って、大切に使ってほしい」と話す頼本さん(岡山市北区で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/02/20210207-OYTAI50008-T.jpg?type=thumbnail

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