主婦から起業 挑戦続く

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IT支援会社社長 青井 寿恵さん 46 (倉敷市)

 「先生、この間のアプリに登録できたよ」「すごい、使いこなしてますね」

 デジタルに弱い高齢者がスマートフォンの基本を学ぶ講座をのぞくと、参加者と同じ目線で楽しむ姿があった。「この間の地図のアプリ、使ってみましたか」「場所や目的によって電波のつなぎ方も使い分けができるんですよ」。つまずきやすいポイントを押さえ、分かりやすい例えや言い換えで受講者を飽きさせない。

女性起業家の支援にも取り組む青井さん(倉敷市で)
女性起業家の支援にも取り組む青井さん(倉敷市で)

 スマートフォンやタブレット端末の使い方を教える会社「アッソ」(倉敷市)を経営する。初心者のやる気を引き出し、参加者同士の交流につなげるスタイルが好評だ。

 新型コロナウイルスの流行が長引いたことで、地域の公民館などでの講座が増え、来年までのスケジュールは埋まっている。「IT(情報技術)が、孤立しやすい人たちを、地域や仲間に結びつける重要な手段になった。社会が根本から変わった」と実感している。

 浅口市出身。21歳で結婚、倉敷市で暮らし始めた。専業主婦に憧れていた。「おやつを作って家族を待つ生活が理想で、バリバリと働くイメージは全くなかった」と振り返る。思い描いた通りに1男1女を育てていた2000年頃、父から譲り受けたパソコンが、家族中心だった世界を揺さぶった。

 「最初は恐る恐る使っていた」が、遠くの友人と即応できるメールやチャット、あらゆる情報につながるインターネットに「すごく便利。何だこれ、面白い」と衝撃を受けた。

 手探りでITを楽しみながら、07年頃には小学校の指導員や職業訓練校の講師になっていた。訓練校の生徒たちは新しい技術や知識に触れると、新たな可能性が開かれ、人との出会いにもつながっていく。ITの持つ可能性と働く魅力に気づいた。

 もう一つの転機は、倉敷市で奄美群島の特産品を扱う父の会社を継いだことだった。一代限りでたたむ準備が進んでいたが、「人なつこい島の人のために」と病床でも取り次ぎを欠かさない父を見て、「私に任せて」と35歳で後を継いだ。

 見積もり、価格の決め方といった基礎も分からなかったが、ITに通じていたことが業務の見直しや効率化に役立った。長年の取引先やスタッフに一から学び、若手の経営者の仲間ができると、経営のノウハウを教わった。

 経営者仲間ができたことで、IT関連の仕事が生まれ、増えていった。そこで設立したのが「アッソ」。スマホに親しみながら交流できる場を提供したいと思った。39歳の時だった。「起業ありきではなかった。人とつながり、刺激を受けるのがうれしくて」と笑顔で話す。

 着々とステップを重ねていた18年、夫が心筋 梗塞こうそく で急死した。専業主婦から転じた時には「しょうがないな」と苦笑しつつ、買い物や料理を分担してくれる最大の理解者だった。悲しみを救ったのは、仕事だった。「落ち込む時間もなく打ち込むことで前を向けた」

 同年末には、起業を目指す女性が交流する「大人小町」を発足させた。「何かを変えたかった」と言う。子育て世代からシニアまで幅広い年代が県内外から集まり、弁護士や税理士など専門職も含めた支え合いになった。「女性同士だから共有できることをきっかけに、次のヒントも芽生えてくる」と感じている。近く、倉敷市内で女性起業家を後押しするシェアオフィスを開設する予定だ。

 専業主婦から専門職、起業、突然の別れ――。「人生はいつ何が起こるか分からない。挑戦ばかりだったけれど、周囲の人のおかげで乗り越えられた」と思っている。「続けていれば必ず出会いやチャンスがあり、幸せの形も変わる。今が一番、楽しいです」(矢沢寛茂)

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