困難乗り越え 共に漕ぐ
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ボート・女子ダブルスカルで準優勝した 堀江 里彩さん 21 岡崎 あやさん 21 (岡山大学
漕艇
部)
昨年12月、ボートの「関西学生秋季選手権代替特別大会」が大阪府内で開かれ、女子ダブルスカルに出場、準優勝に輝いた。コロナ禍で本来の練習が制限されるなか、工夫を凝らして取り組み、手中にした。2人は「今夏は全国で上位入賞を目指す」と意気込む。

ボートは「究極のチームスポーツ」と言われる。選手は前後に動くシートに座り、脚を強く伸ばしてオールに力を伝え、艇を前進させる。速く進むには一糸乱れぬオールさばきが不可欠だ。脚や腕、背中など全身をフルに使い、2000メートルのレース後には起き上がれなくなるほどだ。手にはまめができ、出血もする。多くの困難を共に乗り越えることで、強い信頼関係が育つ。
2人は、1年生だった2019年12月頃からダブルスカルを組んだ。艇首に近く、上下動の影響を受けやすい「バウ」は堀江さん。艇の安定には高い技術力が必要だ。岡崎さんは艇尾側に座る「整調」。司令塔役でペース配分などを担う。
代替特別大会には8大学が出場し、決勝レース(2000メートル)には、堀江さんと岡崎さん(岡山大)を含む4大学が進んだ。2人はスタートが苦手で、序盤の500メートル地点では大阪府立大、鳥取大に続く3位だった。しかし、その後に鳥取大を抜いて1000メートル地点は2位通過。先頭の大阪府立大から約7秒差の8分13秒でゴールした。
「陸上トレーニングで身につけた持久力が我々の強み。序盤で離されても、中盤で追いつけると信じていた」と堀江さん。岡崎さんは大会直前までバウだったが、先輩の助言で整調に回った。「向いていることがわかった」と話す。
岡山大漕艇部は、創部約70年の歴史を誇る。百間川のそばにある同部艇庫(岡山市中区)にはエイトやフォア用など各種艇が置かれている。その中で今月上旬、「ブオンブオン……」という音が響いた。「ローイングエルゴメーター(エルゴ)」。
日が短く、水上での練習時間が限られる冬場のトレーニングで主に使われる。エルゴに取り組んでいた2人は「並んで練習できることがうれしい」と笑顔を見せた。
新型コロナウイルスの影響で、昨年3月中旬~6月末は部活動が禁止されるなど、練習が制限された1年だった。3密を防ぐため、艇に乗っての練習ができない期間があったことは、大きな痛手だった。
しかし、一緒に練習できない期間はそれぞれが自主練習に励み、無料通信アプリ「LINE(ライン)」で連絡を取り合うなどして気持ちを切らさないようにした。そうしてつかんだ準優勝だった。
大学生活は4年あるが、学業や就職などを見据え、3年生の夏頃には引退する。「残された時間は少ない。だからこそ、燃えるような思いがある」(藤沢一紀)