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<下>都市封鎖 慎重な議論を

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行動制限

飲食店が立ち並ぶ繁華街を巡回する県職員(8月20日、岡山市北区で)
飲食店が立ち並ぶ繁華街を巡回する県職員(8月20日、岡山市北区で)

 「営業時間の短縮や酒類の提供停止を繰り返し要請され、何度も延長される。出口が見えないのがつらかった」

 岡山市北区で焼き鳥店を営む山下孝暁さん(56)は、昨春以降の新型コロナウイルスの感染拡大を振り返り、そうつぶやいた。にぎわっていた店はコロナの流行以降、売り上げは半減。制限が解除された10月以降も客足は戻っていない。

 そんな苦境を脱する契機として期待を込めるのが、国が今月から始めた「ワクチン・検査パッケージ」の実証実験だ。ワクチン接種や陰性の証明書を活用して行動制限を緩和するもので、山下さんは「検査証明書を持つ人やワクチン接種を終えた人には、外出を促すような特典もつけてほしい」と要望する。

 行動制限の緩和に向けた動きや期待の声がある一方、次の感染拡大に備え、海外で採用されている「ロックダウン」(都市封鎖)や、それに類する手段を講じられるよう法整備をすべきだとの意見も上がる。

 国は過度の私権制限につながることから導入に慎重な姿勢を示してきたが、全国知事会は8月、現場で変異株の対応に追われた経験を踏まえ「ロックダウン的な手法の導入」などを盛り込んだ提言書を国に提出。衆院選でも各党に提言し、その賛否を知事会のホームページで公開している。

 全国の知事が危機感を抱く背景に、これまで切り札とされてきた緊急事態宣言の国民の「慣れ」があるとされる。県内でも第4波による5月の緊急事態宣言の際、時短命令に従わず県による過料の通知まで至った飲食店などは13店だったが、第5波の8~9月の宣言などでは、延べ48店まで増加した。

 コロナ治療に携わる医療従事者の中にも、厳しい措置はやむを得ないとする声がある。自宅療養の感染者の治療に携わってきた県医師会の松山正春会長は「医療現場にとって、ロックダウンは最善の手法。今後、さらに感染力が強い変異株が生まれる可能性もあり、最悪を想定した強制的な手段も、準備だけはしておくべきだ」と指摘する。

 市民の間でもロックダウンを望む人は少なくない。民間調査会社「サーベイリサーチセンター」(東京都)が、感染が急拡大していた8月、都民に対し効果的な感染対策を尋ねたところ、52・6%の人が「短期的なロックダウン」と回答。これはワクチン接種(53%)に次ぐ、2番目の多さだ。

   ◇

 こうした議論を複雑な思いで見つめる人がいる。穏やかな瀬戸内海に面する国立ハンセン病療養所「長島愛生園」(瀬戸内市)で入所者自治会長を務める中尾伸治さん(87)は「閉じ込められると、人間は精神的に追い詰められる」と懸念する。

 ハンセン病は「らい菌」が原因で、 末梢まっしょう 神経や皮膚が侵される病。感染力は極めて弱いが、国は治療法が確立した後も患者の強制隔離を続けた。中尾さんも奈良県の家族と引き離され、70年以上をこの地で過ごす。

 その間、将来を絶望し自ら命を絶つ入所者の姿を多く目にしてきた。また、1996年に隔離政策が終わった後も、他県では元患者が旅館の宿泊を拒否されるなど、差別的な扱いを受けた。

 「ロックダウンした都市の住民が周囲から忌み嫌われ、解除されても差別や偏見が残らないか」と危惧し、こう語った。「感染抑止に有効な策だとしても、『負の歴史』を忘れてはいけない。慎重な議論をしてほしい」

   ◇

 この連載は松田卓也、岡信雄、根本博行、黒川武士、藤沢一紀、松本慎平、上万俊弥が担当しました。

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2467412 0 争点を問う 21衆院選 2021/10/25 05:00:00 2021/10/24 23:05:22 2021/10/24 23:05:22 飲食店が立ち並ぶ繁華街を巡回する県職員(8月20日、岡山市北区で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/10/20211024-OYTAI50001-T.jpg?type=thumbnail

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