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<豪雨3年>次女と孫 なぜ犠牲に

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倉敷・三宅さん 真備水害訴訟参加

 倉敷市の三宅常男さん(62)は、西日本豪雨で次女の遥さん(当時27歳)と、孫で保育園児の愛ちゃん(5歳)を失った。なぜ2人は死ななければならなかったのか。少しでも理由を知りたいと、6月、多くの被災者とともに国や県を相手取り、裁判を起こした。(岡信雄)

遺影かかえ 原告団先頭

 シングルマザーの遥さんは同市真備町の末政川そばの平屋で、愛ちゃんと2人で暮らしていた。

 遥さんには軽度の知的障害があったが、子どものころから活発で、真備ではサークル活動でバンドを組み、ドラムを担当していたという。一方の愛ちゃんははにかみや。なじみのない人が来ると、ソファの後ろに隠れる子どもだった。

 そんな2人のつつましい暮らしを見守ろうと、三宅さんは豪雨前、仕事終わりに遥さん宅を訪れるのが日課になっていた。愛ちゃんに大好きなアンパンマンのシールやキャンディーを差し出すと、にこにこと笑って受け取ってくれた。

 2018年7月6日夕方も、雨が降る中、いつものように足を運んだ。部屋にいたのは20分ほどだったろうか。遥さん宅を出ようとすると、愛ちゃんは「じいちゃん、バイバイ」と、送り出してくれた。

 真備町の惨状を知ったのは、翌朝だった。遥さんを支援する福祉関係者から一報があり、慌てて車で向かったが、2人の自宅周辺は泥水の海になっており、まったく近づけなかった。

 「逃げて、どこかで助かっていてくれたら」と、避難所を一軒一軒回り、「こんな母娘を知らないか」と尋ね回った。

 警察から2人が部屋で見つかったと連絡を受けたのは、しばらくしてからだった。「遥は押し入れで、愛をかばうように、上に覆いかぶさるようにして見つかったらしい。逃げ場を失い、少しでも高い所にと思ったんだろうな」と三宅さんは唇をかむ。2人の死因は溺死だった。

 それから、仕事は手につかなくなり、夜も眠れなくなった。

 そんな時、真備町で不動産会社を営む吉田勤さんから、国や県の治水対策の問題点を解明するため、訴訟を起こすことを聞いた。三宅さんは、2人の溺死の推定時刻を、市側が誤って認識していたとみられることや、一周忌の追悼式では市側の不手際で式典中に献花ができなかったことなど、行政への不信が重なっていた。「真実がわかるなら」と集団訴訟に加わった。

 6月25日、三宅さんは原告団の先頭に立ち、岡山地裁に訴状を提出した。その手には、遥さんと愛ちゃんの遺影がしっかり抱きかかえられていた。

 「2人はあの小さい部屋で生きていた。こんな悲しいことは、あってはならない」とかみしめるように語る三宅さんは、遥さんと愛ちゃんの遺骨は納骨できず、手元に残している。ご飯と水を供えるのが、3年前からの新たな日課になった。これからは、裁判の経過を報告するということが加わった。

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