文字サイズ

    <3>車いすバスケ「東京で金」

    • カクテルのメンバーと練習に励む網本さん。レベルアップを図るため、海外挑戦を続ける(京都市南区で)=横山就平撮影
      カクテルのメンバーと練習に励む網本さん。レベルアップを図るため、海外挑戦を続ける(京都市南区で)=横山就平撮影

     ◇あと3年…うまくなる努力続ける

     ◇日独でプレー 網本麻里さん 28

     「ドンッ」「キュキュッ」。車いす同士がぶつかり、タイヤと床が擦れる音が響く。京都市南区の体育館。昨年12月、女子車いすバスケットボールチーム「カクテル」のメンバーが練習に励んでいた。

     カクテルは、全日本選手権3連覇中の強豪チーム。ディフェンスに回ったそのメンバー2人の間を、ある選手が突破した。日本代表のエース格で、ドイツでもプレーする網本麻里さん(28)(大阪市東住吉区出身)。「声を出してポジションを確認せんと」と仲間に声をかけ、勝負にこだわる姿勢を見せた。

     網本さんの海外挑戦は今年で7年目となる。日本代表の試合で大柄な外国人選手に押し込まれることがあり、2011年、「力で攻められても動じないよう、経験を積みたい」とオーストラリアのアマチュアリーグに飛び込んだ。

     そして昨秋、ドイツの「ケルン」からオファーを受け、加入した。障害者スポーツが盛んなヨーロッパでは車いすバスケのプロリーグがあり、ドイツはレベルが高い。網本さんは今季、ここで4月までプレー。年末年始などのオフに大阪に戻り、カクテルに加わる。

     リーグは男女混成。男性にはじき飛ばされることもある。だが、弱音は吐かない。「だって、東京で金メダルを取るために必要な経験やと思ってますから」

     網本さんは、右足首が内側に反る障害を持って生まれた。2歳で手術して歩けるようになったが、医師からは激しい運動を禁止された。

     バスケに出会ったのは小学3年生の時。地元チームでボールを追ったが、中学2年生になったら再び手術をすることになり、「もうバスケができへん」と涙に暮れた。再手術は、歩けるものの、走るのが難しくなることを意味していた。

     娘が熱中できるものはほかにないか。母が探して見つけたのが、車いすバスケだった。近くの大阪市長居障がい者スポーツセンターで車いすに乗り、ドリブルをしてみると思った以上に楽しかった。「またできるんや」と笑みがこぼれた。

     手術後、「車いすバスケは趣味で楽しめたら」と思っていた。だが、高校1年生の時に考えが変わった。海外の選手とプレーをする機会があり、高い技術に翻弄されたからだ。「あの人たちと真剣勝負がしたい」と思いは膨らみ、カクテルへの加入を申し出た。

     「練習は嫌い」。でも、うまくなりたいと思うと、どんなことでも我慢できた。現在、カクテルのヘッドコーチで、長年プレーを見守る岩野博さん(52)は「あっという間に動きを覚えた」と当時を振り返る。

     すると、そこからはトントン拍子にステージを駆け上がる。05年に高校2年生で日本代表に選ばれ、翌年の世界選手権に出場すると、19歳で北京パラリンピックのメンバーに。大会の得点王にも輝いた。

     だが、チームは4位。メダルを逃し、悔しさだけが残った。海外へ目を向けだしたのは、そのあとだ。

     現在、プロ待遇とはいえ、ケルンから支払われるのは家賃と試合での移動費のみ。所属する日本の企業から給料を得ているが、生活費も、大阪とドイツ間の旅費も、貯金を取り崩している。「それでもプロチームがない日本に比べれば恵まれてますよ」と言う。

     網本さんは20年のひのき舞台を現役の集大成にするつもりだ。日本は、ロンドンに続き、リオデジャネイロ大会も出場を逃した。だが、自らは力を付けた実感がある。岩野さんも「正確なシュートと相手の攻撃の芽を摘むディフェンスは世界トップクラス。まだ伸びしろがある」と評する。

     あと3年。「優勝が夢のような話なのはわかってる。でも狙いにいきたい。世界との差は努力で埋められると信じてるから」。マメのできた手をそっと見つめた。(内本和希)

     ◇国内に74チーム 

    日本車椅子バスケットボール連盟によると、昨年12月21日現在、国内には車いすバスケのチームは74あり、八つの女子チームが登録されている。海外では登録者のうち、網本さんを含む男女6人がドイツでプレーしているという。

     ルールは一般のバスケとほぼ同じ。障害の程度に応じて持ち点が決められ、コート上の5人の合計点が14点を超えないよう定められている。

    2017年01月04日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    PR
    今週のPICK UP

    理想の新築一戸建て