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競技かるたクイーンを育てた 本多 和代さん 57<下>

来年1月のクイーン戦に向け、袴姿で練習に励む恭子さん(左、大津市で)
来年1月のクイーン戦に向け、袴姿で練習に励む恭子さん(左、大津市で)
土屋功撮影(下)小学校時代に姉妹で獲得したトロフィーや盾をひな壇に並べて記念撮影する恭子さん(右)と姉・未佳さん(2001年4月、和代さん提供)
土屋功撮影(下)小学校時代に姉妹で獲得したトロフィーや盾をひな壇に並べて記念撮影する恭子さん(右)と姉・未佳さん(2001年4月、和代さん提供)

 小倉百人一首競技かるた女性日本一のタイトルを保持する本多恭子さん(29)。小学3年だった2001年2月、「全国かるた競技東大阪大会」に向かう車内で、母・和代さん(57)から「お姉ちゃんの祝賀会でフランス料理を食べたかったら、優勝するしかないよ」と耳打ちされた。

 小学5年でA級(四段以上クラス)昇級を達成した姉・未佳さん(31)の祝賀会が数日後に予定されていた。憧れのフランス料理店に行けるのはA級会員のみ。その資格を一発で得るには、B級(三―二段クラス)大会での優勝しか道がなかった。

 「祝賀会につられて1勝でもしてくれればと願ってましたが、60歳代のベテランや東大生ら5人に勝利して、まさかの優勝。信じられない思いでした」

 フランス料理はもちろんのこと、“史上最年少でのA級昇級”という金字塔まで打ち立てた。「9歳6か月」という最年少記録は、今も破られていない。

 いつ誰と何枚差で勝ったかなどを克明にノートに記し、どの大会も姉妹の戦いぶりを間近で見つめてきた和代さん。だが、かるた人気で出場者が増えたために見学者のスペースがとれなくなり、次第に対戦の模様を見守ることができなくなっていた。

 「どうすれば娘たちの競技を観戦できるか考えあぐねた末、A級と同じ会場で対戦があるB級に自分も出場するしかないと腹をくくりました。なんとかB級入りを果たしたのは、恭子が5年の時でした」

 読まれた句への瞬時の反応や札を払う激しさから、「畳の上の格闘技」とも称される競技かるた。中学では陸上部に属しながら素早く札を取る瞬発力に磨きをかけていた恭子さんだが、高校入学後は部活動をせず、ひたすらかるたに打ち込んだ。

 「練習場所は主人が営んでいた焼き鳥店の更衣室。店が混んできたら手伝ってくれる約束で、学校帰りにいつも来てましたね」

 1畳もない空間にゴザを敷き、百人一首の録音テープを流して札と向き合う毎日。ざわついた店内で、1人耳を澄まし続けた。

 100分の1秒を争う競技では、上の句の最初の1字が読まれた瞬間に、下の句に手を伸ばせるかがポイント。恭子さんの耳は、読み手が発する1字目の「す」「さ」「せ」を、「S」の息遣いだけで判別できるほど。

 「並外れた集中力と耳を鍛えられたのは、あの更衣室だったよう。狭くて札を思いっきり飛ばせない分、確実に狙った札に手を伸ばす正確さも培われたようです」

 学生かるたの強豪・立命館大では、未佳さんとアパート暮らしをしながら、全日本かるた協会加盟の「大津あきのた会」にも所属して頂点を目指した。

 「良き練習相手でありながら、お互い競技者として育ってきたからか、常にライバルとして火花を散らしていましたね」

 12年、恭子さんが20歳でクイーン戦への挑戦権を手にすると、翌年、郷里で小学校講師となった未佳さんが挑戦者に。恭子さんは、社会人となった24歳の時にも2度目のチャンスを得たが、いずれも、独特の雰囲気にのまれ、最高位へはたどり着けなかった。

 「クイーン戦の直前に結婚し、限られた練習時間で勝ち上がってきた今回は、『勝たなければ』と気負っていたこれまでとは違う精神的なゆとりが見てとれました」

 5試合を戦い、先に3勝した方が制するクイーン戦。1、2回戦を落とし、後がなくなった恭子さんに声をかけたのは、ともに修羅場を経験してきた未佳さんだった。「恭子らしくない。もっと気持ちよく取ったらいいねん」。流れが変わり、得意の「攻めがるた」が息を吹き返した。

 頂点を極めたこの日、身につけていたのは9歳の時から愛用してきた緑色の袴。和代さんが、成長に合わせて何度も裾を縫い直してきた大舞台での勝負服だ。

 コロナ禍で多くの大会が中止となった異例の1年。実戦をほとんど積まぬまま、恭子さんは来年1月9日、大津市の近江神宮で「連覇」に挑む。もちろん、あの緑色の袴姿で。

 「無我夢中で走り続けてきたけれど、娘と同じ夢を追いかけられて幸せな日々でした。家庭との両立を目指すクイーンとして、夢の続きを1年でも長く見させてほしいと願っています」(渋谷聖都子が担当しました)

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1731281 0 母なればこそ子と歩む 2020/12/26 05:00:00 2020/12/26 05:00:00 2020/12/26 05:00:00 来年1月のクイーン戦に向け、「大津あきのた会」のメンバーと袴姿で練習に励む恭子さん(左)(11月28日撮影、大津市で)=土屋功撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/12/20201225-OYTAI50022-T.jpg?type=thumbnail

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