なにわ発展 支えた海

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とれたてのシラスを運搬船(右)に移す伊田さん(右、岬町沖で)
とれたてのシラスを運搬船(右)に移す伊田さん(右、岬町沖で)
「魚庭(なにわ)」と呼ばれ、古くから良好な漁場だった大阪湾(岬町沖で)
「魚庭(なにわ)」と呼ばれ、古くから良好な漁場だった大阪湾(岬町沖で)
「魚庭(なにわ)」と呼ばれ、古くから良好な漁場だった大阪湾(岬町沖で)菱垣廻船が大阪湾へと出港する様子を描いた江戸時代の錦絵「菱垣新錦番船川口出帆之図」
「魚庭(なにわ)」と呼ばれ、古くから良好な漁場だった大阪湾(岬町沖で)菱垣廻船が大阪湾へと出港する様子を描いた江戸時代の錦絵「菱垣新錦番船川口出帆之図」

大阪湾 歴史振り返る

 古くから豊かな漁場として知られる大阪湾。大阪の「なにわ」は、魚介類が豊富なことを意味する「魚庭なにわ」が語源になったとの説もある。全国有数の漁獲量を誇るシラス漁の船に乗り、湾の魅力や歴史について考えた。(浦野親典)

栄養豊富な海水

 「海の宝石ですよ」

 青空が広がる今月5日朝、岬町沖に停留した運搬船で、府鰮巾着網いわしきんちゃくあみ漁業協同組合(岸和田市)で働く伊田良平さん(34)が、シラスがたっぷり詰まった大量のカゴを見て、目を細めた。半透明の魚体が朝日に照らされ、美しく輝く。

 漁船が網をひいてとったばかりのシラスを、運搬船が岸和田市内の港に運ぶ。この日の水揚げは約20トン。ざっと1000万円にはなる計算だ。漁期は5~12月頃で、新鮮な生しらす丼を食べに来るファンも多い。

 「シラスは大阪湾を代表する魚だけど、それだけじゃないんですよ」と伊田さん。春のイカナゴ、夏のハモ、秋のアジ……。とれる魚介類は計200種類に上る。

 なぜ大阪湾は豊かな漁場なのか。

 「海水の栄養が豊富で、湾の外から魚が集まりやすいんです」。こう解説するのは府漁業協同組合連合会長の岡修さん(70)。淀川や大和川から栄養分が土砂とともに大阪湾に流れ込み、魚が生息しやすい浅場ができ、明石海峡と紀淡海峡から魚が入ってくるのだという。

 府によると、1980年代のピーク時、大阪湾の年間漁獲量は6万~10万トン超を記録し、瀬戸内海にあるほかの湾・灘と比べて最多を誇る年が多かった。近年は約2万トンに落ち込んでいるが、それでも、1平方キロ・メートル当たりでみると漁獲量が全国有数の漁場に変わりはない。

海上交通の要衝

 

 海上では、漁船以外にも、港に向かう船が多く見られた。運搬船を操縦する伊田さんが「この湾は昔から海上交通の要衝だったんです」とも説明してくれた。

 5世紀の頃、すでに難波津という港湾施設があり、遣隋使、遣唐使の船も利用した。戦国時代には堺が南蛮貿易の拠点としても栄え、「東洋のベニス」とうたわれた。

 江戸時代になると、大阪湾でとれた魚介類を北前船や菱垣ひがき廻船かいせんが、江戸など各地に運んだ。「天満青物市場」と「堂島米市場」と並ぶ大坂三大市場の一つとして、「雑喉場ざこば魚市場」が鷺島(大阪市西区)にでき、「天下の台所」を支えた。

 そして明治。日本の資本主義の父、渋沢栄一の呼びかけで湾岸部に東洋紡の前身となる「大阪紡績」が創業した。その後も次々と紡績工場が進出。「台所」が工業地へと装いを変えた。

工場の増加と環境問題

 戦後、湾岸部の埋め立て開発で、重化学分野などの企業の立地が相次ぎ、阪神工業地帯は高度成長期以降の日本を牽引けんいんした。

 一方で、海水浴場は減り、1970年代になると、工場排水などに伴う赤潮が社会問題になった。その後、環境は改善しつつあるが、府民の大阪湾に対するイメージは今ひとつだ。

 府が2017年に実施した府民調査では、回答者の半数以上が「大阪湾の愛着や魅力」について、「ない」と答えた。府は漁協などと湾のPRに取り組むが、一筋縄にいかないのが現実だ。

 岡さんは漁師として大阪湾を見てきた半世紀を振り返りつつ、こう言う。「砂浜も減り、工場が増え、湾を身近に感じる機会が少なくなったことは間違いない。だが、大阪の発展は大阪湾なくして語れない」

 人々の生活と経済を支えてきた大阪湾。その課題や現状を今一度、様々な角度から見つめ直したい。

 ニュースをわかりやすく伝える「New門@大阪」の今月のテーマは「大阪湾」です。海洋環境、魚のブランド化、観光スポットなどを計6回にわたって紹介します。

 ◆大阪湾は、瀬戸内海の最東端に位置し、大阪平野と淡路島に囲まれる。東京湾と伊勢湾に並ぶ三大湾の一つとされ、面積は琵琶湖の2倍程度の約1450平方キロ・メートル。湾岸部には、府内だけでも13の漁港がある。

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1625154 0 New門@大阪 2020/11/14 05:00:00 2020/11/14 05:00:00 2020/11/14 05:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/11/20201113-OYTAI50014-T.jpg?type=thumbnail

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