LGBT 仏道を助けに

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性的少数者が集う寺住職 柴谷宗叔さん 66

 守口市にある「 性善寺しょうぜんじ 」の住職柴谷 宗叔そうしゅく さん(66)は、性同一性障害の当事者です。若い頃に自身が悩んだ経験から、「性的マイノリティーの人たちが集える場所を作ろう」と2019年にこの寺を開き、家族にも打ち明けられず思い悩む人らに寄り添う活動を続けています。

 「性善寺」という名前には、「誰でも仏様になれる素質を持っている」という仏教の教えと、「性で悩むことは悪ではなく善である」という二つの思いを込めました。

 物心ついた頃から、ほかの男の子とは何か違うと感じていました。好きだったのは野球ではなく、ままごと。だけど、女の子は仲間に入れてくれませんでした。現実の世界に居場所を見つけられず、本ばかりを読んでいるような子どもでした。

 LGBT(性的少数者)という言葉も認識もない時代。父親は「男は男らしく」という考えで、すぐに手を出す人でした。親元を離れるため東京の大学に進学。卒業後は、「服装が自由」というイメージのあった新聞社に入社しましたが、取材時はやはり背広にネクタイ姿。会社では「男」を演じ、家に戻るとスカートをはくという〈二重生活〉を送っていました。

□    ■

 転機となったのは1995年の阪神大震災です。当時神戸市内に住んでいましたが、母親に用事を頼まれ、たまたま寝屋川市の実家にいたんです。その後は会社で寝泊まりしながら仕事を続け、1週間後にようやく戻ると自宅は全壊していました。

 がれきの中から見つけたのは、四国八十八か所霊場の納経帳。当時はスタンプラリーのような気分で集めた物でしたが、「身代わりになって助けてくれはったんや」とはっとしました。それが仏の道に進むきっかけとなりました。

 仕事の傍ら、往復6時間かけて高野山大学大学院の社会人コースに週1回通学しましたが、次第に仕事との両立が難しくなり、51歳で早期退職。それを機に「もう何も隠す必要はない」と性別適合手術を受け、戸籍も女性に変更しました。

 宗派ごとに僧侶を記録する「僧籍簿」の性別も女性にしました。高野山真言宗では、一部の儀式には男性しか入れません。「もったいない」とも言われましたが、自らの性を全うしたかったのです。

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 若い頃、私には気持ちを打ち明ける場所がありませんでした。「性について悩む人を救う寺を作りたい」と活動していた時、ご縁があって出会ったのがこの寺です。先代の尼僧が高齢で長らく手入れされていませんでしたが、初めて私が訪れた時、ご本尊のお釈迦さんが、にこーっと笑われた気がしたんです。お寺に呼ばれた、そう思っています。

 私のような(心と体の性が一致しない)トランスジェンダーや同性愛者の多くは子どもがいません。性善寺では、そうした人らの永代供養も行っています。また、戒名は基本的に男女で異なりますが、「死んでからも意思に沿わない性は嫌だ」という人もいるので、ご本人の望む性別で戒名を付けています。

 私より上の世代は、家族にも隠したままという人がたくさんいると思います。新型コロナウイルスの感染拡大が終息したら、高齢者施設を訪れて、寺の取り組みを知ってほしいと思っています。

 毎月最終日曜日には、ご 祈祷きとう と相談会を開いており、毎回20人程度の参加があります。「ここに来れば仲間がいて気が休まる」。そんな声を聞くと、当初の目的を果たせたような気持ちになります。

 当事者でなければ、わからない気持ちがきっとある。道のない所に道を付けていくのが、私の務めと思っています。(久場俊子)

 ◆大阪市出身。早稲田大卒。2005年に新聞社を退職した後、高野山大学大学院で本格的に仏教を学び、僧侶となる。主な著書に「江戸初期の四国遍路」(法蔵館)など。

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2177011 0 大阪ひと語り 2021/07/04 05:00:00 2021/07/04 05:00:00 2021/07/04 05:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/07/20210703-OYTAI50014-T.jpg?type=thumbnail

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