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サイレント映画専門の楽士 鳥飼りょうさん 40

映像に音声が付く「トーキー」が普及する昭和初期まで、映画は活動写真と呼ばれ、映像に合わせて生演奏する「
サイレント映画は19世紀末から1920年代に盛んに制作され、トーキーの登場とともに姿を消しました。映像の完成度は非常に高く、映像表現の最高峰という人もいます。弁士が登場人物のせりふを語ったり状況説明をしたりするスタイルは日本独特で、海外では字幕が一般的でした。
音楽は日本も海外も共通で、映画館ごとに楽士が演奏。少人数や1人で伴奏することが多かったですが、中にはオーケストラでオリジナル曲を用意した映画もありました。
音楽が前に出すぎると観客が映画の世界に没入できない、邪魔しないよう遠慮すると演奏の意味がなくなる――。その微妙なラインを攻めるのが楽士の腕の見せどころです。「今日のピアノはよかったですね」という感想が多い時は、「演奏が目立ちすぎた」ということになります。
小学生の頃、姉が電子オルガンを習っていて「僕も習いたい」と始めたのが音楽との出会いでした。その後もピアノや打楽器などに触れ、大学の交響楽団では音楽漬けの4年間を送り、社会人になってからも休日に市民オーケストラに参加しました。
2012年10月、当時住んでいた大阪市北区の小さな上映室「プラネットプラスワン」でサイレント映画の上映がありました。語りだけの映画でチラシに「伴奏者募集」と書いてあったので、面白そうだと応募しました。楽士になるきっかけとなりました。
この時に出会った弁士やキーボード奏者らと「
「週末のお手伝い」ではなく、音楽を仕事にしたいと思うようになり、「映画」「語り」「演奏」の総合芸術として楽士が仕事になるのではと考えたのです。ユーチューブやDVDの映像などを参考に演奏を創っていきました。
19年から楽士に専念して活動するようになり、これまでに伴奏した作品は500を超えます。学校で芸術鑑賞会に呼んでもらうことも増えました。子供たちに見てもらって「昔の映画は面白かった」という記憶を持ってほしいと思っています。
今年は文化庁の助成を得て、サイレント映画のピアニストの先輩である柳下美恵さんと一緒に全国5都市でサイレント映画を上映する「ピアノ
12月には大分県別府市と那覇市、静岡市のピアノを常設している映画館を回ります。すばらしさをもっと多くの人に知ってもらうため、これからもどこへでも行きます。(聞き手・彦坂真一郎)
◆京都府出身。同志社大卒。サイレント映画専門の楽士として関西を中心に活動。あらゆるジャンルのサイレント映画に即興で伴奏を付ける。大阪市のプラネットプラスワン、シネマパブワイルドバンチ、神戸市の元町映画館では定期的に演奏している。無声映画振興会代表。