仕立ての技 障害者へ

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就労支援NPO理事長 森川仁雄さん 41

 障害者の就労を支援する八尾市のNPO法人「テイラーズ・ギルド」の作業場では、利用者たちがオーダーメイドスーツの縫製を行っています。理事長の森川仁雄さん(41)は「誇りを持てる仕事を手に付けてほしい」との思いで、業界では珍しい取り組みに挑戦しました。

 オーダーメイドスーツの縫製作業が中心の就労継続支援A型事業所として2016年に開所しました。現在36人が利用し、4人のベテラン職人らの指導を受けながら、高品質のスーツを作っています。

 最初は基礎的な縫い方を学び、慣れてくるとスーツの裾やボタンホールといった各パーツの縫製を専門的に行うようになります。キャリアを重ねるごとに縫える部分が増えるので、今ではパンツなら一人で製作できる利用者もいます。技術を習得し、最終的に一着すべての工程を担えるようになってもらうのが目標です。

 二つの課題を解決する狙いがあります。

 スーツ業界は深刻な技術者の後継者不足に悩んでいます。特にオーダースーツは技術継承の場がほとんどなく、今の職人が引退したら技術が途絶える恐れがあります。

 もう一つは、単純な軽作業が中心となってしまいがちな事業所の実情です。就労はできるけれど「やりがい」を見つけるのが難しく、そうすると「将来」も見えないのが問題でした。

 そこでウィン―ウィンの関係を目指し、職人たちが利用者に「誇りを持てる仕事」を提供、利用者には業界の担い手になってもらうのがNPOの取り組みです。

 中学・高校時代はフランスに留学しました。当時はパリのファッションブランド街を、友人と見て回るのが楽しみでした。服飾の世界に関心を持った原点です。

 英・ロンドンの大学に進み、製図などをコンピューターでこなす「CAD」の技術を学んで卒業しました。帰国後、こうした技術を生かして服飾関係の仕事をしたいと考えていたところ、A型事業所を運営する知り合いから「障害者が働く選択肢が少なすぎる。何かいい方法はないだろうか」と相談を受けました。

 実家が糸卸売業を営んでいたこともあり、スーツ業界の後継問題は知っていました。そこで事業所にスーツの縫製のような「珍しい仕事」を提供することを思い立ち、この取り組みにたどり着きました。利用者が年々技術を習得しており、放置されてきた職人の後継問題に解決の道筋を作れたのではないかと自負しています。

 障害を持つ可能性は誰にもあります。その時、社会に参加する方法がたくさんあることが、人生の豊かさにつながるはずです。

 次は、靴職人から製作技術を学んだり、会計事務所で働きながら簿記の知識を得たりできるプロジェクトを検討しています。障害者が「チャレンジしてみたい」と思えるような仕事の幅を広げるのが目的です。

 障害者と農業をつなぐ「農福連携」という言葉は知られるようになりました。これからは「産福連携」も重要になると思います。その先駆けとなれるよう、作業所から一人でも多くの「スーツ職人」を輩出したいと思っています。(聞き手・行田航)

 ◆大阪市出身。中学時代に渡仏した後、ロンドン芸術大卒。テイラーズ・ギルドでは、事業者などから産業と福祉分野のマッチングに関する相談を受け付けている。問い合わせはメール(info@taylorsguild.com)で。

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