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NPO法人「ミラクルウィッシュ」代表 益田紗希子さん 43

 その時、あなたは子どもの命を守れますか――? 大阪市のNPO法人「ミラクルウィッシュ」代表の益田紗希子さん(43)は、東日本大震災の時に抱いた思いから、身近な避難法を考える「防災おさんぽ」などの取り組みを広める活動をしています。

 2011年3月11日、当時住んでいた和歌山市の産婦人科で妊娠を伝えられ、母になれる喜びに包まれました。帰宅後、揺れを感じてテレビを見ると、東北で黒い津波が家々を押し流す映像が流れていました。

 転勤族だったため周囲に頼れる人はおらず、夫も不在がちでした。「何も知らない街であんな地震に遭ったら、生まれてくる子どもを私1人で守れるのだろうか」。不安を抱いたまま、11月に長女を出産しました。

 翌年、夫の転勤で兵庫県三田市に移ったのですが、子育てに疲れて引きこもり、産後うつに苦しみました。巡回で訪れた保健師に誘われ、近所にある親子向け交流広場に通ううちに、うつから抜け出すことができました。

 地域とのつながりが生まれて余裕ができた時、「防災をやらなければ」との思いがよみがえりました。14年、仲のいいママ友らとミラクルウィッシュを設立。ハザードマップや災害の基礎の勉強を始めました。ただ、座学では興味がある人しか集まらず、知識が身につかないとも感じていました。

 お手本になったのが、北摂地域で活動する「ほくせつ親子防災部」。同じ子育て中の母親らが、子どもと楽しめる参加型イベントをやっており、見よう見まねで市民講座を開くようになりました。100円均一ショップの防災グッズを並べたり、避難時の非常用リュックをかついでもらったり。参加した東北からの避難者に「被災の感覚を忘れかけていたけど、久しぶりに思い出した」と言われた時、災害をわが事にすることの難しさと、大切さに気づきました。

 19年11月、三田市から引っ越した大阪市阿倍野区で「あべの親子防災部」を作りました。21年3月からは3か月に1回、「防災おさんぽ」と題して親子10組ほどで街を歩き、避難する時に危険な場所を確認しています。倒れそうなブロック塀や空き家、狭い道路があれば、子どもたちが「ここは危ないよ」と言いながら地図にシールを貼っていきます。

 こうした親子向け防災知識をまとめた「防災ノート」を、三田市や阿倍野区で製作してきました。それぞれの地域の災害想定に応じた内容を盛り込み、災害用トイレや凝固剤の備蓄もすすめています。食料に比べると盲点になりがちな問題ですが、生活密着を掲げる私たちらしいなと思っています。

 今月には、堺市でも親子防災部をスタートさせました。今後は色んな自治体と協力して、防災ノートの各地域版を製作したいと考えています。防災教室で、地元の人たちの「気づき」を大切にしながら一緒に作り、災害をわが事にしてほしいです。

 私を孤独から救ってくれたように、災害から身を守るには「人とのつながり」しかないと痛感しています。この10年、転勤先で出会った人に助けられながら活動してきました。これから、地域の人々に恩返しをしていこうと誓っています。(聞き手・上田貴夫)

 ◆和歌山県田辺市出身。歯科衛生士で、歯科スタッフの教育なども手がける。ママ友と結成した「ミラクルウィッシュ」は2020年にNPO法人化。「防災ノート」のほか、震災や避難生活に備える「ポリ袋クッキングブック」などを発行している。

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