医師の目で生活「診る」

スクラップは会員限定です

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

枚方市保健所長 白井千香さん 60

 新型コロナウイルス対策の最前線に立つ保健所は、感染症や災害の発生時の「健康危機管理の拠点」であると同時に、地域の健康増進や母子保健、食品衛生など市民生活に深く関わります。枚方市保健所長で、全国保健所長会副会長でもある白井千香さん(60)は「診療所で患者を待つ医療ではなく、人々の生活を診たい」と公衆衛生医を志したといいます。保健所の現状や課題などを聞きました。

 全国に保健所は約470か所あり、勤務する医師は約700人です。自治体の合併や行財政改革で保健所と医師の数が大きく減少していたところに、新型コロナの感染症対応が求められ、ゆがみが各地で露呈したと感じています。医療機関との調整や保健師への指示を担う公衆衛生医をもっと育成しなくてはいけません。

 医師の視点で、生活背景から問題点や改善点を見つけるのも、公衆衛生医の役割。大阪では、コロナ関連死が多いと言われますが、根底には生活習慣病がある。今はコロナ対応に追われる日々ですが、地域で保健師が赤ちゃんから高齢者までに関われるような拠点を枚方市で作りたいと考えています。保健所の認知度が高まったことをチャンスに変えたいと思っています。

 小学3年の頃、赤痢を疑われ隔離入院したことがありました。血便や高熱が続き、母は死も覚悟したそうです。担当医が女性で「こういう仕事もあるんだ」と意識したことが、今につながっているかもしれません。

 結婚を機に夫の勤務先の関西に引っ越しました。神戸市に長く勤め、2009年に海外渡航歴のない国内初の新型インフルエンザ患者が市内で確認された時は、予防衛生課長でした。感染症病棟はすぐ満床になり、「熱があるがどこへ行けば」「患者のPCR検査をしたい」と市民や医療機関からの電話が殺到。保健所は発生届の受理や入院勧告、疫学調査に追われました。

 今回のコロナで、枚方市では全庁体制で対応に臨み、電話相談の窓口を早期に切り分けるなど、当時の経験を生かせた部分もあります。一方で、やはり保健所や指定医療機関に負担が集中しました。検査態勢も当初なかなか進まず、国は受け皿をもっと整えておくべきだったと思います。

 現場は疲弊しています。特に、昨年の第4波ではワクチン接種が追いつかず、病床も足りなかった。40、50歳代も重症化する中、誰を入院させるのか厳しい判断を迫られ、本当に申し訳ないが、「入院は難しい」と言わざるを得ないケースもありました。バーンアウト(燃え尽き症候群)となった職員もいます。

 私自身、阪神大震災の直後にうつ状態となり、半年ほど休職しました。だからこそ職員には、「できるだけ交代で休んで」と伝えています。感染症法により、全ての感染者を国に報告しなければなりませんが、それが治療が遅れる原因となることもある。全国保健所長会では、基礎疾患のある人や高齢者などへの対応を優先する体制に移行すべきだと訴えています。

 市民生活においても、近くに人のいない場所でまでマスクをする必要はないし、普通に手を洗えばそれでいい。大切なのは、無理なくできる「持続可能な」感染対策です。私たちもわかりやすく伝えていく必要があると思っています。

(聞き手・久場俊子)

 ◆仙台市出身。1986年に筑波大医学専門学群を卒業後、東京都内の病院や保健所で勤務。91年から2016年まで神戸市で公衆衛生に携わった。枚方市の保健所長公募に応じて、17年4月から所長を務める。

スクラップは会員限定です

使い方
「地域」の最新記事一覧
3073795 0 大阪ひと語り 2022/06/11 05:00:00 2022/06/11 05:00:00 2022/06/11 05:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/06/20220610-OYTAI50036-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込みキャンペーン

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)