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豊中市社会福祉協議会 勝部 麗子さん

困窮者 SOS見逃さない

豊中市社協が運営する農園で高齢者と交流する勝部さん。どんな時も、人とのつながりを持つことが活動のベースだ(昨年12月、豊中市で)=近藤誠撮影 ※撮影のためにマスクを外しています
豊中市社協が運営する農園で高齢者と交流する勝部さん。どんな時も、人とのつながりを持つことが活動のベースだ(昨年12月、豊中市で)=近藤誠撮影 ※撮影のためにマスクを外しています

 引きこもり、ごみ屋敷、ホームレス――。どんな現場にも足を運び、人とつながることで解決の糸口を見つけてきた。「コロナ禍で、これまでのつながりが切れてしまってはいけない」。豊中市社会福祉協議会の勝部麗子は、そう決意する。

 1か月半に及ぶ緊急事態宣言が解除されたばかりの昨年5月下旬。「ホームレスの姿が増えた」と聞いて、公園に走った。60代の男性は、「ネットカフェで寝泊まりしていたが、コロナで居場所がなくなり、職も見つからない」と明かした。

 すぐに一緒に住まいを探し、11月には「仕事が見つかった。命の恩人に最初に知らせたかった」との電話があった。だが、勝部は「福祉の窓口と縁のなかった人が突然、困窮している。これまでは考えられなかった社会情勢に、地域のつながりが試されている」と気を引き締める。

 地域に根を下ろし、人に寄り添う活動は、孤独死が問題となった1995年の阪神大震災が原点。社協で地域支援を担当していた勝部は、住民ボランティアとともに高齢者見守りに力を入れた。そこで見えてきたのは、行政の担当窓口もないような「制度のはざま」に残された人々だ。

 近所から「家の近くにごみ屋敷状態の家がある」と相談を受け、高齢の男性宅に通った。ノックしても開けてくれず、「心配しています」と書いた名刺を挟み続けた。1年後、一度も会えないまま男性は自宅で孤独死したが、勝部の訪問日を丁寧に書き込んだ名刺が20枚以上見つかった。悔しさと同時に「きっと助けを求めていたのだと思う。だから、見て見ぬふりは絶対にしない。一人も取りこぼさない」と誓った。

 2004年に府が導入した地域福祉の専門職「コミュニティーソーシャルワーカー(CSW)」の第1号となった勝部は、10年ほどで500件以上のごみ屋敷問題を解決。校区単位などで組織化した住民ボランティアは約8000人に増え、見守りの体制が整った。

 そんな勝部も、コロナ禍に心が折れそうになった。昨年2月からボランティアが集まったり、高齢者宅を訪問したりといった活動を自粛。緊急事態宣言中、地区会館で打ち合わせをした時は、「こんな時に集まっていいのか」との苦情も寄せられた。世間のムードに仲間は萎縮いしゅくしていった。

 転機は4月、民生委員の女性の一言だった。「阪神大震災以来、人生をかけて続けてきた活動を、コロナだからといって止めていいの」。感染を恐れるあまり、もっと大事なSOSを見逃しかねないと思った。

 5月、「離れていても、つながろう」を合言葉にボランティアの活動指針を公表。感染予防をしながら支援を続けるための具体策に反響は大きく、全国の活動団体から問い合わせが相次いだ。

 「直接会えなくても、『あなたのことを心配しています』というメッセージを届けたい」。そう考え、市内の一人暮らしの高齢者に手作りマスクを、大学生にはレトルト食品などの詰め合わせを送った。

 ある引きこもりの男性は食品の箱詰め作業を通じて社会に出る自信がつき、職を見つけた。食品を受け取った大学生は、学習支援のボランティアに協力するようになった。皆、長い閉塞へいそく感の中で「自分も誰かの役に立ちたい」と思いを募らせていたことに気づいた。

 支えられる側が、支える側に回るのは、勝部の信条。それがコロナ禍で見え始めたことは、希望の光だという。「突然、収入や人生の大切なものを失うコロナは誰の責任でもない。いつ、だれが<弱者>になるか分からない。だからこそ、困った人を見捨てない優しい社会になってほしい」と願う。(大森篤志、敬称略)

生活相談 3倍に急増…昨年4~9月

 コロナ禍で、全国各地の生活困窮者窓口「自立相談支援機関」に昨年4~9月に寄せられた相談数は前年の3倍に急増。一方で、ボランティアやNPOは、人と接触するあらゆる活動のあり方を模索している。

 福祉団体の交流サイト「つながりアクション」は、▽自宅での運動法を掲載したミニ新聞の配布▽オンラインお茶会――といった活動の工夫事例を紹介。全国社会福祉協議会は「対面での活動に難しい面もあるが、コロナ禍で深刻化する貧困や孤立の問題に対応したい」とする。

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1743244 0 コロナの先に 2021 大阪 2021/01/03 05:00:00 2021/01/03 05:00:00 2021/01/03 05:00:00 農園の参加者と大根を収穫する豊中市社会福祉協議会の勝部麗子さん(中央)***マスク姿の掲載を希望されています。使用の際は「撮影のためにマスクを外している」ことを明記してください***(12月8日、大阪府豊中市で)=近藤誠撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/01/20210102-OYTAI50041-T.jpg?type=thumbnail

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