<外国人材@大阪>「特定技能」期待と不安

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介護と製造現場での課題

「将来のことわからない」

 ◇寝屋川のホームでEPA介護福祉士 ウラヤンさん

 入管難民法の改正で4月から拡大される外国人労働者の受け入れで、新たな在留資格「特定技能」の創設に期待と不安の声が交錯している。既存の制度で入国し、介護と製造の現場で働く2人に会って課題を探った。

笑顔で入居者の食事の世話をするウラヤンさん(寝屋川市で)
笑顔で入居者の食事の世話をするウラヤンさん(寝屋川市で)

 「お昼ご飯です。リビングに行きましょうね」

 特別養護老人ホーム「寝屋川石津園」でフィリピン人のカリサ・クレア・ウラヤンさん(28)が、個室で寝ていた高齢女性に声をかけた。ベッドからゆっくり体を抱きかかえ、車いすに乗せた。

 担当するのは、11人が生活する6階で、多くの人が自分で歩けない。勤務は3交代制で、この日の勤務は午前11時~午後8時の「遅出」。昼食の準備に続いて入居者のトイレを手伝った後、リビングに誘導する。

 11人は食べ物をのみ込む力も、かむ力もばらばらで好き嫌いもある。「次は鶏肉ですよ」「おいしいですか」。声をかけながら相手のペースに合わせ、スプーンを口に運んでいく。

 ウラヤンさんは母国で半年間、日本語を学んだ後の2014年、経済連携協定(EPA)の介護福祉士候補者として来日した。日本の施設で働きながら国家資格の介護福祉士を目指すという仕組みだ。国内でさらに半年日本語を勉強して、この施設にやってきた。必要な3年間の実務経験を積んで国家試験に合格した。

 候補者は試験で不合格なら原則帰国しなければならない。ウラヤンさんは候補者だった3年半は休みの日、専門学校で国家試験対策のプログラムを受けてきた。施設側も個人授業で支援した。

 介護の分野での外国人材の受け入れにはEPA、技能実習生、留学生と三つのルートがある。働きながら国家試験の合格を目指すEPAは最もハードルが高いが、ウラヤンさんは「EPAでは現場に出るまで1年間、日本語を学ぶ余裕があり、助かった」と言う。

 ウラヤンさんはこう続けた。「介護ではお年寄りを敬うとか、礼儀正しく振る舞うという日本人のルールを知ることも大切。一定程度の日本語がわかる実習生らはすぐ現場へ出てしまうが、母国とのルールの違いに気づかないままだと、戸惑うことも多いと思う」

 施設を運営する社会福祉法人「たちばな会」が候補者の受け入れを始めたのは09年。「少子高齢化が進む日本では近い将来、業界が立ちゆかなくなる」という危機感からだった。

 これまでウラヤンさんを含めて7人を受け入れてきた。うち3人は不合格で帰国したり、結婚などでやめたりした。ウラヤンさんも当面は施設で働き続けるつもりだが、「将来のことはわからない」と明かす。

 介護は、外国人労働者の受け入れが最も多いと見込まれる業種だ。現場では日本語の能力や専門知識に加え、体の不自由なお年寄りや障害者に寄り添う繊細なケアが求められるが、慢性的な人材不足に陥っている。「特定技能」では、従来の国家試験より簡単な日本語の能力や技能で、施設での食事や入浴の介助などが可能になる。在留期間は5年。業界では即戦力としての期待が高まる一方、不安視する意見も少なくない。

 施設長代理の荒木大輔さん(43)は「ウラヤンさんたちは日本人と全く同じように働いてくれるが、法改正後、現場がどうなっていくのかは未知数。来た人が一人前に育った頃、在留期間が終わるということにならないか見極めたい」と話す。(冨野洋平)

 

 

「もっと日本で働きたい」

 ◇大東で技能実習生 コンさん

アルミの上澄みを取り除くコンさん(大東市で)
アルミの上澄みを取り除くコンさん(大東市で)

 直径が1メートル近くある炉をのぞき込み、ベトナム人技能実習生のレ・ミン・コンさん(26)が、ひしゃくで溶けたアルミの上澄みを慎重にすくい取っていく。炉の温度は約600度。大東市内の非鉄金属製造会社で材料を管理する仕事に1日8時間、週5日携わる。

 コンさんが、ここで自動車部品の鋳造などを学び始めたのは2015年4月。ベトナム・ベンチェ省から来日し、会社の寮で暮らしながら技術を磨いた。3年の在留期間を終えて帰国した後、「もっと日本で働きたい」と、さらに2年間滞在する資格を取って昨年11月、戻ってきた。

 「日本語は漢字や平仮名があって難しいけれど、まちは安全で和食はおいしい。何より日本人は、とても親切」。忘れられないのはJR大阪駅でICカード乗車券を落とした時のこと。拾った日本人が走って追いかけてきて「これ、あなたのじゃない」と手渡してくれた。

 会社が実習生のために開いてくれる懇親会やボウリング大会を通じて日本人の知人も増えた。悩みや困ったことがあると、外国人実習生の監理団体が通訳を派遣し、相談に乗ってくれる。

 このままキャリアを積めば、3年以上の実習経験などが評価され、4月の改正入管難民法施行で、比較的簡単な仕事に就く人向けの在留資格「特定技能1号」に認められるかもしれない。

 「そうなれば、最長5年間、さらに日本に残れると聞いて、うれしい限り。大好きな日本でいつまでも働けることを願っている」

 会社もコンさんを後押しし、新しい制度を注視している。「能力ある実習生に賃金面でも相応の処遇をしていきたい。戦力になりかけた時に帰国するのではなく、日本でステップアップしていく制度が根づいてほしい」。幹部の一人(56)は強調する。

437145 0 ニュース 2019/02/09 05:00:00 2019/02/09 05:00:00 2019/02/09 05:00:00 入居者の食事を世話するウラヤンさん(寝屋川市で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/02/20190208-OYTNI50086-T.jpg?type=thumbnail

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