重度知的障害 自立描く 宍戸大裕監督「道草」

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「自立した生活を始めることで行動障害が落ち着いた障害者もいる」と話す宍戸監督(大阪市北区で)
「自立した生活を始めることで行動障害が落ち着いた障害者もいる」と話す宍戸監督(大阪市北区で)

23日から西区で上映 「施設、親元以外の道知って」

 重度の知的障害や自傷などの行動障害を持つ人が重度訪問介護を利用して一人暮らしをする姿を描いた映画「道草」が、23日から大阪市西区の映画館「シネ・ヌーヴォ」で上映される。重度の知的障害がある人の多くは親元や施設などで生活しているが、撮影した宍戸大裕監督(36)は「一人でも地域で暮らしていけることを知ってもらえれば」と話している。(斎藤七月)

 公園のブランコで遊び、コンビニで好きな菓子を選んで買う。食事の後は道草をしながら気の向くままに散歩する。作品では重度の知的障害と自閉症があり、行動障害も持つ人たちがヘルパーに見守られながら、親元や施設を離れて暮らす日々が描かれる。

 宍戸監督が撮影を始めたきっかけは、作品に登場する岡部亮佑さん(26)の父で、早稲田大の岡部耕典教授(福祉社会学)からの依頼だった。

 集団生活が苦手な亮佑さんは18歳から、東京都内のアパートでヘルパーの支援を受けて一人暮らしをしている。重度の知的障害者が自立して生活するのは珍しく、別の作品で宍戸監督を知った岡部教授は「息子の例を通じて、こうした選択肢があることを知ってほしかった」と話す。

 亮佑さんは言葉で思いを表現するのが難しい。ヘルパーは亮佑さんの表情などからその気持ちを読み取り、時に怒り、時には距離を置いてサポートする。2016年春に撮影を始めた宍戸監督は亮佑さんの人柄やヘルパーとの関係に魅了されたといい、「障害者は自らの思いを語らない。映画にして彼らの声なき声を届けたかった」と他の障害者らにも撮影の対象を広げた。

 作品には、神奈川県相模原市で16年に起きた知的障害者福祉施設「津久井やまゆり園」の殺傷事件で、重傷を負った尾野一矢さん(45)と家族も登場する。一矢さんが施設でしか暮らせないと思い込んできた家族が、宍戸監督を通して重度訪問介護を知り、一矢さんとともに自立の道を探る様子を収めた。

 あえてナレーションをつけず、軽快な音楽とともに日常の暮らしを映し出す。感情を抑えられずに自傷行為に走るなど、自立に向けて葛藤する障害者のありのままの姿にもカメラを向けた。宍戸監督は「彼らの姿から『生きる』とはどういうことなのかを感じてもらえたら」と語る。大阪での上映は4月5日まで。

 ◇重度訪問介護 重度の知的・身体障害者らが自宅などで生活できるよう長時間ヘルパーを派遣し、費用を給付する国の制度。2006年に重度身体障害者を対象に始まり、14年から行動障害を持つ重度の知的障害者や精神障害者に拡大された。費用は本人が原則1割、残りを国と自治体が半分ずつ負担する。制度に基づいて利用できる時間は市町村が決める。

重度訪問介護活用を 一人暮らし、全国で数十人

 重度訪問介護のサービスを提供する事業所は府内にもある。茨木市の社会福祉法人「ぽぽんがぽん」では重度の知的障害や精神障害を持つ3人が利用し、自立した生活を送っている。

 利用者の一人で知的障害がある40歳代の女性が23年前に母親を亡くした後、外出できなくなり、女性を支えられなくなったために家族が市や法人などに相談したことがきっかけで、法人が制度開始前の2000年から取り組んでいる。

 女性は現在、平日昼間に作業所で働き、弁当の盛りつけ作業を担当する。そのほかの時間はヘルパー約10人が交代で支援するなか、自分で買い物や料理もこなしている。介護者の一人は「自立してから落ち着いた表情に変わった」という。

 厚生労働省の16年の調査では、知的障害者の9割以上は親と暮らすという。重度訪問介護を使って一人暮らしをしているのは全国でも数十人にとどまるとみられる。

 制度が十分に知られていないうえ、ヘルパーや一人暮らしができる住居の確保が難しい場合もあるためで、財政力の乏しい自治体では支援を受けにくい傾向もある。「ぽぽんがぽん」の太田吾郎理事は「障害のある人を親がずっと支えられるわけではない。地域での共生を多くの人に考えてもらいたい」と話す。

489768 1 ニュース 2019/03/15 05:00:00 2019/03/15 05:00:00 2019/03/15 05:00:00 「自立生活を始めて、行動障害が落ち着いた障害者もいます」と話す宍戸大裕監督(大阪市北区で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/03/20190314-OYTNI50051-T.jpg?type=thumbnail

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