コロナ 出所者も就職難 事業者、経営厳しく受け皿減少
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コレワーク 出張相談やセミナー強化
新型コロナウイルスの影響で経済全体に影響が出るなか、刑務所や少年院の出所者も、雇用情勢の悪化で厳しい状況に立たされている。出所者の就労支援を行う「矯正就労支援情報センター」(コレワーク)は、感染対策を取りながら事業者向けの「出張コレワーク」を開催するなど、出所者の受け皿確保のための対策を強化している。(岸田藍)
「支援制度や採用のコツを知ることができ勉強になった。機会があれば出所者を雇用したい」
11月下旬、大阪市内で開かれた「刑務所出所者等雇用セミナー」に参加した60歳代の建設会社の男性社長はこう話した。セミナーは、「コレワーク近畿」(大阪市中央区)が事業者に出所者の雇用の意義などを説明するために開催し、企業5社の関係者が参加した。
コレワーク担当者は「コロナ禍で旅館などサービス業が打撃を受け、厳しさを増す。事業者の協力で就職先を増やしたい」と話した。
コレワーク近畿は受刑者と事業者をつないで就労支援を図るため、2016年11月にコレワーク西日本として開設し、今年7月に「近畿」に改称された。設立以来、出所者を採用する動きは順調に拡大。事業者の相談件数は右肩上がりで、開設から19年度末までに352件の内定につなげた。
だが、コロナ禍で求人が減少するなどし、出所者の雇用情勢は悪化。コレワーク西日本では今年1~6月、内定につながったケースは33件で前年同期の49件に比べて約3割減少した。受刑者の紹介など事業者への対応数も218件で、前年同期の403件から半減。経営難を理由に内定が取り消された受刑者もいるという。
コレワーク近畿では、事業者が遠方に移動しなくても済むよう、職員が各府県に出向いて相談や求人登録などを行う「出張コレワーク」を実施。16日には兵庫県豊岡市で開催され、今後も個別相談会を含め、近畿の各地域で順次、開く予定だ。また、各地のコレワークは事業者向けセミナーの職種を限定し、小規模で開催するなど感染対策を取りながら啓発に力を入れる。
コレワークが対策を強化する背景には出所者が再び犯罪に手を染める再犯の問題が深刻化していることがある。
法務省によると、保護観察終了時に無職だった人の再犯率は24・6%で、有職者(7・7%)の約3倍。また、再犯者として刑務所に入った人の約7割が、犯行時に無職だった。
こうした状況を受け、同省は東日本と西日本の2か所だったコレワークを全国8か所に拡大。コレワーク近畿は7月から管轄が近畿2府4県に狭められた。セミナーでは受刑者が仕事をイメージしやすくなる求人票の書き方を解説するなど、地域の産業や雇用情勢に応じた支援を展開している。
コレワーク近畿の大橋直三室長は「コロナ禍の中でも出所者には仕事が必要で、企業とマッチングを図り、受け皿を確保して再犯防止につなげたい」としている。
コレワーク近畿は要望があれば個別相談会や、刑務所や少年院の見学を実施している。問い合わせは(0120・29・5089)。
【コレワーク】 埼玉と大阪のほか、北海道、仙台、名古屋、広島、高松、福岡の計8か所に設置。全国の刑務所や少年院から6か月以内に出所予定の受刑者の居住予定地や資格など12項目をデータベース化し、相談に来た事業者に雇用条件に合う受刑者がいる収容施設を伝えるなどして、出所者の就労を支援する。