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讃岐うどん、浜村淳さん… ひかれる出会い、即企画化
讃岐うどんにたこ焼き、四国遍路から浜村淳さんまで――。関西・中四国をテーマとする書籍にこだわって刊行してきた「西日本出版社」(吹田市)が今春、創業から20年を迎えた。出版業界の“東京一極集中”を打破しようと設立して以降、著者とじっくり向き合う丁寧な本作りをモットーに、従業員4人の小さな会社ながら数々のヒットを飛ばしてきた。内山正之社長(63)は「本作りは人との出会い。今後も人や、その人が住む土地を大切にして出版し続けたい」と語る。(滝口憲洋)
奈良市出身の内山社長は大学卒業後、関西が拠点の「
当時の資金は300万円。後ろ盾もなく「まともに相手されないだろう」と不安を感じていたが、付き合いのある書店の店主らが共感し「面白い出版社になるから取引してあげて」と取次会社との間を取り持ち、嘆願書まで提出。創業時から大手と取引することができた。内山社長は「街の本屋さんに背中を押してもらった」と感謝する。
この20年間で手掛けた書籍は約150点。独特なのは、その手法だ。内山社長がパーティーや会合で偶然出会った人と話し込み、「この話を誰かに届けたい」と感じたらプロジェクトがスタート。「事前に企画書を作ったり、会議を開いたりすることは、まずない」という。
創業間もない頃、有名店から穴場まで讃岐うどんを知り尽くした地元タウン誌の元編集長に書き下ろしてもらったのが、食べ歩きの“指南書”とも言うべき「超
浜村淳さんの「さてみなさん聞いて下さい」は、浜村さんのもとに1年半通い詰め、その軽妙な語り口を再現した。「興福寺の365日」や「金峯山寺の365日」は、知っているようで知らない寺での暮らしぶりや日々の修行について、若手僧侶らにつづってもらったものだ。
ほかにも、瀬戸内の島々や日本書紀、関西電力に奈良少年刑務所――と題材は様々だが、一貫してその土地に息づく人々の魅力を伝えてきた。「『それ、めちゃおもろいやん』が出発点。売れる本を作ろうと思ったことは一度もない」と笑う。
19年度には、優れた出版活動を顕彰する「
紀伊国屋梅田本店でフェア
西日本出版社の書籍30点以上を集めた「20周年フェア」が、紀伊国屋書店梅田本店で12日まで開かれている。問い合わせは同店(06・6372・5821)へ。