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人気アニメ「さよなら私のクラマー」の舞台となっている蕨市が、アニメツーリズム協会(東京)の「訪れてみたい日本のアニメ聖地88(2022年版)」に初めて選ばれた。作品を地域活性化の呼び水にしようと市と事業者が連携しており、市の担当者は「市を挙げた取り組みに今後も力を入れていきたい」と話している。(児玉森生)
作品と女子サッカーを応援する有志がつくる「蕨さよクラ応援団」のウェブサイトでは、写真付きでゆかりの場所を紹介している。団長の佐藤成久さん(59)によると、テレビアニメ化で「蕨市に注目が集まるきっかけになれば」と始めた。漫画やアニメは実際の建物や風景を忠実に描いているため、サイトの情報は作品のゆかりの場所を訪ねる「聖地巡礼」に重宝されているという。
作品に登場する「県立蕨青南高校」女子サッカー部のロゴ入りステンレスボトル、ご当地サイダー「わらびりんごサイダー」限定ラベル……。市にぎわいまちづくり連合会の呼びかけに応じて、これまでに20種類以上の関連商品が作られた。
集客へ勉強会も 市もアニメの舞台としてPRに力を入れてきた。キャラクターが通う学校のモデルになった市立一中には、映画公開前の昨年5月に横断幕(縦4メートル、横20メートル)が掲げられたほか、市内にキャラクターが描かれた300本ののぼりも設置された。今年1月には作品に出てくるスポットを訪ねるウォーキングイベントを開催し、約80人が参加した。
聖地巡礼で新たな観光客を呼び込もうと、3月には事業者だけでなく熱心なファンを交えた勉強会を開く。新たなグッズの開発を支援するため、2022年度当初予算案には200万円を計上した。市商工生活室の加藤嘉明係長は「聖地に選ばれたのは、地元事業者やファンの皆さんのおかげ。作品を通じて蕨を一緒に盛り上げてくれる人を増やしたい」と話した。
さよなら私のクラマー 架空の「県立蕨青南高校」女子サッカー部で奮闘する少女たちの物語で、JR蕨駅など実在の風景も登場する。新川直司氏の原作漫画が「月刊少年マガジン」(講談社)2016年6月号から21年1月号まで連載された。21年4月にテレビアニメ化されると、6月に映画も公開された。
ファン「巡礼」経済効果
テレビアニメや映画の舞台となった県内の自治体では、熱心なファンが「聖地」のスポットを訪れることで一定の経済効果を上げている。
秩父市はこれまで「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」と「心が叫びたがってるんだ。」、「空の青さを知る人よ」でそれぞれ「聖地」に選ばれた。市によると、年間380万~390万人だった観光客数は「あの花」が放送された翌年(2012年)以降、若者を中心に増え、17年には580万人に上ったという。
市内の事業者も延べ200種類以上の関連商品を展開し、累計で数億円の売り上げがあったとされる。市内に移住してきたファンもいるといい、市の担当者は「さらなる『聖地巡礼』につながれば」と期待する。
県内有数の観光地・川越市は「神様はじめました」と「月がきれい」の舞台でもある。両作品のヒットを受け、市は今後、同市が舞台となる作品では放送前から関連商品を開発するよう市内の事業者に呼びかける。放送期間が3か月程度の作品が一般的で、「放送開始後では商品展開が間に合わない」(市担当者)ためだ。商工団体を通じて事業者を募り、ファンが聖地を訪れるまでに商品をそろえておく考えだ。
【アニメ聖地に選ばれたその他の自治体と活動事例】
自治体/作品/活動内容
鷲宮町(現・久喜市)/らき☆すた/市商工会鷲宮支所がツンデレキャラの「柊かがみ」らをイメージしたソース「ツンダレ」シリーズを発売
横瀬町/心が叫びたがってるんだ。/町などが作品に登場するバス停を模した観光案内板を設置
飯能市/ヤマノススメ Next Summit/路線バス事業者の国際興業がラッピングバスを運行
和光市/「冴えない彼女の育てかた」シリーズ/市のウェブサイトで、聖地のスポットや作品のエピソードを紹介
※アニメツーリズム協会選定の「訪れてみたい日本のアニメ聖地88(2022年版)」と自治体などへの取材に基づく