北小松の自然 守りたい

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長年採集を続けた植物の標本を前に民族植物学について語る阪本さん(大津市で)
長年採集を続けた植物の標本を前に民族植物学について語る阪本さん(大津市で)
インド・デカン高原の広大な雑穀・シコクビエ畑を訪れた阪本さん(1985年撮影)=著書「雑穀博士ユーラシアを行く」より
インド・デカン高原の広大な雑穀・シコクビエ畑を訪れた阪本さん(1985年撮影)=著書「雑穀博士ユーラシアを行く」より

 ◇民族植物学者 阪本 寧男さん 87

 「水源かん養の観点からも、自然景観の保全のためにも大きな役割を果たしている」

 力を込めて語る先にあるのが、大津市北小松にある約6万平方メートルの山林「北小松用地」。大阪市水道局の保有地だが、同局は昨年5月、「適切な活用法が見いだせない」と売却方針を打ち出したため、自然が失われることへの不安が広がっている。

 周辺自治会は用地の慎重な取り扱いを求め、昨年10月、売却前の地元への通知などを求める要望書を提出した。住民のひとり、植物の専門家として、学術面から用地の重要性を説く報告書を作り、要望書に添えた。

 報告書では、周辺に生息する野生植物のリストも添付した。イワカガミやササユリ、アケビ、コナラ――。きれいな花を咲かせる野草や低木、山菜、ドングリを実らせる樹木まで、その数は約250種に及ぶ。「報告書を作るために記録したわけじゃない。どこに何が生えているか、いつも観察しながら歩いていたら、できたんです」

 活動に取り組む背景にあるのが、植物と人間の多種多様な関わりを研究する民族植物学者として、呼吸するように植物採集を続けてきた半生だ。

 少年時代、自宅が山間部にあったことから、木の実を探し、植物に親しむようになった。旧制中学の動員で農作業を手伝っていた頃、農家の女性に「ママコノシリヌグイ」という雑草の名前の由来が、憎い存在をたたくために、草のトゲが使われたとのエピソードにあると教えられ、さらに興味をそそられた。道端の草一つひとつを注意深く観察することが習慣づいたという。

 京都大学で研究職に就いてからは、アフリカ・サハラ砂漠で主食になっている穀類の調理法を調査。雑穀を食べて暮らす人々を知って衝撃を受け、雑穀を研究の主要なテーマに据えた。2003年に退官するまでアジアや欧州、北米など訪れた国は20を超える。

 「研究を始めた当初は『貧乏人の食べ物をなぜ研究するのか』と言われたが、今や雑穀は健康食品。時代が私の研究に追いついてきた」と笑う。最近も四国の焼き畑農業に関する研究で撮りためた写真を整理する作業に追われる日々が続く。

 その植物全般への深い知識と経験を知った北小松の自治会関係者に求められ、執筆したのが北小松周辺の植生に関する報告書だった。

 用地の売却は昨年度の予定だったが、要望活動もあり、今年度に持ち越された。「北小松の山から眺める琵琶湖の美しさは代え難い。安易な開発がされないよう歩き親しんだ山を守っていきたい」と力を込めた。(川本修司)

       ◇

 2017年には、アジアやアフリカ、中南米などの文化研究に貢献した研究者を顕彰する「第32回大同生命地域研究賞」を受賞。雑穀や食文化の研究を重ね、キビとアワの地理的起源で新説を発表したことなどが評価された。主な著書に「モチの文化誌」(中公新書、1989年)、「雑穀博士ユーラシアを行く」(昭和堂、2005年)などがある。京都大名誉教授。大津市在住。

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21488 0 人あり 2018/05/14 05:00:00 2018/05/14 05:00:00 長年採集を続けた植物の標本を前に、民族植物学について語る阪本さん(大津市で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180513-OYTAI50013-T.jpg?type=thumbnail

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