湖北の子育てに安心を
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「まちのほけんしつ」 中川 真哉さん 42・僚子さん 37


長浜市平方町の県道沿いに「まちのほけんしつ」の看板を掲げた木造2階建ての建物がある。医療、病児保育、子育て支援の三つの機能を備えた総合施設だ。
小児科医の真哉さんが施設を運営する医療法人の理事長も務め、保健師と看護師の資格を持つ妻の僚子さんら約20人のスタッフがサポート。2016年7月の開業以来、数多くの親子に対応してきた。
真哉さんは、小学3年の時、医療・人道援助の国際NGO「国境なき医師団」が栄養失調の子どもを助ける様子をテレビで見て、医師を志した。自治医大在学中に、児童虐待の実態を知り、「子どもだけでなく親も支える必要がある」と小児医療の道を歩み、子育て支援への関心も持ち続けた。
長浜赤十字、市立湖北両病院などで12年間勤務し、07年には大学の後輩の僚子さんと結婚した。「育ててくれた恩返しを」と、地元での開業を決意。茨城県出身の僚子さんも「地域の力となる子どもたちがいきいきと暮らせる町にしたい」と賛成した。
新築した建物を木造としたのは「優しく温かいイメージがあるから」。気軽に立ち寄れるようにと「ほけんしつ」と名付け、「子どもが怖がらないように」と、真哉さんは白衣ではなく、Tシャツ姿で診察する。
子育ての「ワンストップサービス」施設にした理由について、真哉さんは「様々な機能を持たせることで、1人の子どもの成長を見守ることができる。子どものちょっとした変化に気付きやすく、親も安心感を持てる」と説明する。
スタッフは、医師、助産師、保健師、看護師、臨床心理士ら。真哉さんが多い時で1日約100人を診察。病児保育では、看護師と保育士が付き添い、体調不良を早期に見つけたり、けいれんなどの発作時に救急車を呼んだりと、きめ細かく対応している。
産前・産後ケアでは、産後うつの予防に注力。「眠れない」「赤ちゃんのお風呂の入れ方が分からない」などの悩みを助産師が聞いて適切な対処方法を指導している。
新型コロナウイルスの感染が拡大した20年は、病児保育を1日1組とするなど対面の活動を制限する一方、オンラインによるサービスを充実させた。
6月に保育士らと親子がオンラインで手遊びやリトミックなどを楽しむ「おうちサロン」を開始。7月からは、保健師、助産師、栄養士らが無料相談に応じている。
4歳から11歳まで3人の子を育てる僚子さんは「コロナ禍で人との接触を減らすことが求められるなか、孤独な子育てを強いられる親が増えている」と案じ、「本当に困っている時、相談できる場所であり続けたい」と言葉に力を込める。
「元気がなかった子がとびっきりの笑顔を見せてくれたり、母親にだっこされていた幼児が歩いているのを見たりするのがうれしい。親御さんと一緒に子どもの成長を喜べる」と真哉さん。多くのスタッフと協力し、湖北地域の子育て環境の充実に力を注ぐ。(田上秀樹)
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「まちのほけんしつ」は、1階に小児科・アレルギー科「すこやかkidsクリニック」、2階に、働く母親の子ども(6か月~小6)の病気時に子どもを預かる病児保育室「ぽかぽか」と、市子育て支援センター「きずな」がある。1月の主なオンライン講座は、▽子育て勉強会「スキンケア」(22日午前10時)▽マタニティー勉強会「これであなたもイクメン講座」(23日・午後1時半)▽すくすく離乳食「2回食・3回食へのステップアップ」(29日午前11時)。問い合わせは、まちのほけんしつ(0749・68・3271)。