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甲賀市地域おこし協力隊 福島  嵩仁(たかまさ) さん 35

 今月1日、東京から甲賀市甲南町へ住民票を移し、市の地域おこし協力隊の一員となった。かつて尾張藩に仕えた甲賀忍者が代々住み、21世紀まで約150点もの古文書を秘蔵していた旧家を住まいと定め、忍者の調査研究や、その成果を生かした観光振興に意欲を燃やしている。

「甲賀忍者の魅力を世界に発信したい」と話す福島さん(甲賀市で)
「甲賀忍者の魅力を世界に発信したい」と話す福島さん(甲賀市で)
福島さんが所有する忍術書の和とじレプリカや忍具の数々
福島さんが所有する忍術書の和とじレプリカや忍具の数々

 「忍者の聖地・甲賀で、しかも〈忍者の家〉に住めるなんて。夢のようで、もう楽しみしかない」

 自称「ただの忍者オタク」。だが、旧家のあるじで2000年代に古文書を確認した渡辺俊経さん(83)が転居に際し、今後の活用を含めて屋敷を託しただけあって、その知識と見識は半端ではない。

 2018年、地元の甲賀忍術研究会が主催する「甲賀流忍者検定」で上級に合格。同年春から3年間、三重大大学院修士課程の忍者・忍術学コースで学んだ。最初の2年間は週1回、東京から始発に乗って通い、この3月に修了してコース2人目の学位を得た。

 修士論文のテーマは、江戸時代に書かれたとされる忍術秘伝書「万川集海まんせんしゅうかい」の成り立ちだ。各地に残る写本を比較研究して系譜をたどり、三重県伊賀市に残る巻物風の書物を元祖と推定。その上で「伊賀から甲賀へと受け継がれたのでは」と結論づけた。

 幼い頃から人気漫画「落第忍者乱太郎」のファンだったが、「がっつりはまった」のは意外にも社会人になってから。東京で外国人向けに忍者体験プログラムを提供していた道場で手裏剣の使い方などを習い、とりこになった。

 全国の忍者愛好家と知り合い、伊賀で市民講座があれば夜行バスに乗って駆けつけた。東京・日本科学未来館で16年に開かれた忍者企画展では、三重大教授らの解説をむさぼるように聞いて刺激を受けたという。

 「現代人がイメージする、黒装束で秘術を駆使する忍者像は、江戸時代の歌舞伎などから生み出されたフィクション。その一方で、甲賀の渡辺家のような忍者がリアルに存在し、忍術書を書いていた。そういう交錯した様相がたまらなく面白い」

 現代のイメージと過去の史実をつなげたい――。そう願って進んだ大学院では、知れば知るほど固定観念を崩されていった。

 「忍者って下級武士だったのか」「女忍者『くノ一』はいなかった?」。忍者に抱いていたロマンが薄れる反面、殿様の入浴警護を怠ってクビになったり、故郷の病気の母が心配で任務を放り出して帰郷したりした忍者もいたと知り「超人的なスパイとは違う、すごく人間的でいとおしい姿が浮かんできた」という。

 住み慣れた東京を離れ、協力隊員に手を挙げたのは、甲賀への特別な思いからだ。

 伊賀ゆかりの服部半蔵や百地三太夫ら名の知れた忍者はおらず、三重大のような研究機関もない。インターネットの検索数でも伊賀に及ばない。「だからこそ甲賀には、原石の輝きがある。地域に溶け込み、それを磨き上げるのは、とてもチャレンジングなこと。どんな甲賀忍者がいて、その魅力は何か。史料を丁寧に調べ、発信したい」と語る。

 「Ninja」の愛称を持つ愛用のバイクで街へ繰り出す度、見渡す限りの自然に癒やされ、城跡などに忍者の息吹を感じながら、一人胸を高鳴らせている。(藤井浩)

          ◇

 千葉県松戸市出身。法政大法学部を卒業後、大手IT会社「ヤフー」の法務部や事業部で10年間勤務した。32歳で退社し、忍者ゆかりの地を持つ自治体などが連携して観光振興や情報発信を進める「日本忍者協議会」(東京)の職員に。忍者の情報を集めたサイト「Ninjack」(https://ninjack.jp/)を個人で運営している。

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1961276 0 人あり 2021/04/05 05:00:00 2021/04/05 05:00:00 「甲賀忍者の魅力を世界に発信したい」と話す福島さん(甲賀市で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/04/20210404-OYTAI50006-T.jpg?type=thumbnail

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