二刀流 創造性豊かに

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駅ピアノでジャズを奏でる寺田さん(京都市で)
駅ピアノでジャズを奏でる寺田さん(京都市で)

ピアニスト・映像作家 寺田稜太郎さん 19

 7月半ばの昼下がり、JR京都駅ビル内の駅ピアノに向かい、即興演奏を始めた。駅舎から浮かんだイメージは「出立」。 鍵盤けんばん の前で体を大きく揺らしながら緩急のあるフレーズを奏でると、蒸し暑い公共空間に澄んだ音の粒がこだました。「きれいに響いて良かった」。少し上目遣いのはにかんだ笑みを浮かべた。

 昨春に県立玉川高を卒業したばかりのジャズピアニストだ。在学中から全国のライブハウスなどに出演を重ねて来た。豊かな創造性は他のジャンルのアーティストも引きつけ、今年は東京でのコンテンポラリーダンス公演に音楽制作などで参加。映像制作にも乗り出すなど、表現の幅を広げている。

 幼い頃から自宅のグランドピアノに触れ、中学2年までクラシックを学んだ。一時は野球やバスケットボールに打ち込み、鍵盤からは離れたが、高校2年の時、ジャズ・ピアノの巨匠ビル・エバンスや、細野晴臣さんらの「イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)」の作品にふれる。「音楽で自分を表現したい」との強い思いに駆られた。

 音楽教室に通ってジャズの理論を学ぶと、クラシックの素養にすっと染み入り、1年足らずで心に浮かんだフレーズやコードを自在に奏でられるようになった。「人に見られることが好き」な性格。「知らない人と交わって自分を成長させたい」との思いもあり、高2の冬から県内外のライブハウスに出かけては「弾かせてください」と頼み込み、ソロやセッションで腕試しした。

 高3の夏休みには北海道へヒッチハイクで出かけ、ライブハウスでソロ演奏。マスターや現地のジャズファンに気に入られ、声を掛けられるまま、卒業前の冬休みにも再訪し、道内8か所でライブを重ねた。「海でも見て帰るつもりが、幼い頃からたしなんできた芸事を通して人とのつながりができ、修業になった」と振り返る。

 大学受験はしないと決めていたので、高校では一風変わった存在だったかもしれない。だが、ピアノの腕前と言動の面白さで一目置かれ、手品が趣味の友達と共演ライブを企画したこともある。

 3年の担任だった村山由美教諭は「ライブを見に行くと、独特の空気感で聴衆を引きつけていて、行く道の選択に納得させられた。やりたいことを思うようにやってほしい」とエールを送る。

映画「東京ラッシュ」のロケに臨むムーディ勝山さん(右)ら(大津市で)
映画「東京ラッシュ」のロケに臨むムーディ勝山さん(右)ら(大津市で)

 だが、そんなピアノも「自分の一面に過ぎない」と言い切る。東京の若手コンテンポラリーダンサーと共演した5月の公演では、無観客配信のための演出と映像、音楽を担当。さらに7月、小中学校の先輩にあたるお笑いタレント・ムーディ勝山さん(41)を主演に迎え、初の映画「東京ラッシュ」の撮影を始めた。脚本・監督を務め、俳優としても出演する。

 鳴かず飛ばずの野球選手が、旅先で様々な人と出会い、奮起するストーリー。「忙しく時が進む現代から、どんな未来が広がっていくかを描きたい」と意気込む。

 先月末、大津市内で車に乗って旅するシーンの撮影に臨んだムーディさんは「キラキラした瞳で映画への思いを語ってくれ、志と熱意を意気に感じた」とうれしそうだ。

 撮影にはスマートフォンを活用する。「これまでの映画作りとは違う手法を探り、映像文化に一石を投じてみたい」。ジャズピアノの演奏流儀のように、自由でおおらかなスタイルで創造性の翼を広げている。(藤井浩)

 ◇

 草津市出身。映画「東京ラッシュ」は今冬の完成を目指し、制作資金100万円を目標に13日から大手仲介サイト「キャンプファイヤー」(https://camp-fire.jp/)でクラウドファンディングを始める予定だ。ピアノ演奏の模様は動画投稿サイト「ユーチューブ」で見ることができる。

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