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    <1働き方>こぎ出せ 新時代へ

    • 「自然とアート作品を融合させる取り組みにも挑戦したい」と語る大久保さん(長浜市で)
      「自然とアート作品を融合させる取り組みにも挑戦したい」と語る大久保さん(長浜市で)

     ◇独創フィギュア 世界進出

     ◇長浜・大久保さん ネット連携 どこでも仕事

     「カッコイイ!!」

     「海外でもヤバイらしいよ」

     昨年12月、千葉市の幕張メッセで、人気コミックや映画のグッズ販売などを行う世界的なイベントが開かれた。その中で長浜市を拠点にフィギュアを製造する「インスティンクトイ」の販売ブースに、国内外から大勢の人々が詰めかけた。

     頭にトゲをまとったクマ、体の一部が溶けだしたキングコング――。不気味だが不思議とカワイイ。様々なフィギュアが1個数千円から数万円で次々と売れた。

     同社のオフィスは長浜の住宅街にある。作業するのは、デザイナー兼社長の大久保博人さん(37)だ。作品も独創的だが働き方もまさに自己流。社員の姿はない。

     社員は台湾や香港、大阪などに住む計6人。大久保さんのデザインを香港のスタッフが3次元化し、中国の工場で製造する。細部の調整などはインターネット通話でスタッフに指示。会議もパソコンを使えば問題ない。

     「実際に社員が会うのは、毎月、世界のどこかであるイベント会場です」

     子どもの頃から絵が好きで、東京芸大を目指したが3浪した。千葉の美術系予備校に通い、将来に悩む中、フィギュアと出会った。アニメから飛び出たような姿と表現の自由さに可能性を感じ、この道を選んだ。

     千葉から拠点を移したのは2010年。長浜はふるさとであり、土地代が安かった。「ネットさえあれば、働く場所は関係ない」

     でも、それだけが魅力ではない。創作に必要なひらめきやデザインのヒントを琵琶湖などの豊かな自然から得られるという。

     故郷への特別な思いもある。湖畔にアートオブジェを並べたり、世界のフィギュアを集めたミュージアムを作ったりと構想は膨らむ。

     「新たな魅力を作りたい。地元でやりたいことは、たくさんあります」

    • 相棒の自転車「えいえもん号」とともに行商を続ける山内さん(東京都江東区で)
      相棒の自転車「えいえもん号」とともに行商を続ける山内さん(東京都江東区で)

     ◇手作り品 自転車で行商

     ◇東京・山内さん 高島帆布でかばん

     紙芝居を始めるの? と思わせるレトロな自転車を路上にとめる。荷台の木箱を開けると、鮮やかなバッグやブックカバーが次々と現れ、それらをハンドルにかけ、木箱の上にも飾れば、流しの「かばんやえいえもん」の開店だ。

     店主は東京都江東区在住の山内麻衣さん(39)。ふるさとである織物の街・高島市の帆布を広めたいと、2008年秋から東京の下町を自転車で巡り、手作りしたかばんの行商を続ける。

     洋裁をする祖母の影響で、幼い頃から物作りへの関心が高かった。「好きなことを仕事にしたい」と、卒業後は職人を目指し、かばんメーカーの埼玉工場などで働いた。

     働くうちに独立を志すが、店舗の家賃は高い。母の勧めで、思いついたのが自転車での行商。「家賃はいらんし、面白いかも」

     平日に商品を作り、週末は日没まで街に出た。初めは冷やかしもあったが、続けるうちに客が増え、厚手で丈夫な高島帆布が気に入ったとオーダー品の依頼も入った。「路上だとカーブミラーも“試着”用の鏡になります」と笑う。

     17年に長女を出産し、昨年5月から行商を再開。子育てをしながら、時々自転車で街にでる。「自分のペースで続けられる。昔からのやり方だけど、今に合った生き方かも」と思う。山内さんに刺激を受けて、行商を始めた若者もいるという。

     店名には「ええもん作るで、売るで」との思いを込める。「おばあちゃんになっても続けていたら、絶対格好いいですよね」。ふるさとで紡がれた帆布を積んで、自転車の旅はこれからも続く。(家城健太)

    2019年01月01日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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