<3湖魚復権>

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冬の琵琶湖で、漁船を操縦する中村さん(高島市で)
冬の琵琶湖で、漁船を操縦する中村さん(高島市で)

 ◇淡水魚 おいしさ広める

 ◇高島の漁師・中村さん

 琵琶湖の向こうにうっすら雪化粧した県最高峰・伊吹山を望む高島市マキノ町の海津漁港。中村清作さん(33)は昨年12月、湖面に船を走らせ、厳しい表情で湖の様子を見定めた。「冬の琵琶湖は天候次第」。漁ができる日は限られる。

 奥琵琶湖と呼ばれる海津で刺し網漁を営む漁師の3代目。漁に打ち込むとともに、湖魚の〈復権〉に取り組み始めたのは20歳代半ばの頃だ。県漁連の青年会に入り、京阪神にPRに行く度に、淡水魚が不当に扱われていることを知った。

 「泥臭い」「おいしくない」――。「『じゃあ食べたことあるの?』と聞くと、『そう聞くから、食べたことない』って返される。文句言うなら食べてからにしてくれよって」

 琵琶湖の底力を見せたい。気心の知れた料理人たちと挑戦したのが、2016年に東京で開かれた全漁連主催の魚料理コンテストだった。ビワマスの刺し身にしょうゆ漬けのハラコを掛けた「天然ビワマスの親子丼」は、用意した1000食が4時間半で完売。グランプリに選ばれた。

 それでも、表彰式でマイクを握った中村さんはこう言い放った。「琵琶湖の本気は、僕たちの本気は、こんなもんじゃない」

 青年会は18年10月、食用魚として流通してこなかったコイ科のニゴイをフライにして添えたカレーを県内のカレーライスチェーンのメニューに登場させた。鮮度の落ちが早く、小骨が多い欠点を、水揚げ直後の血抜きと氷締め、ハモのように骨切りすることでクリアした。開発に2年。約300万円の借金をして完成にこぎ着けた。

 東京で11月下旬にあった全漁連のイベントでは3000食を販売した。会場に来た人たちは次々と「うまい」と言ってくれた。

 中村さんは気付いたという。「その魚って僕たちの目の前の湖にあるんですよね。滋賀の人に声を大にして言いたいです。もっと食べませんか、琵琶湖の魚を」(川本修司)

「おばあちゃんの味を残したい」と話す中川さん(野洲市で)
「おばあちゃんの味を残したい」と話す中川さん(野洲市で)
カフェのような外観をした「ビワコドーターズ」
カフェのような外観をした「ビワコドーターズ」

 ◇若者向けアレンジ 好評

 ◇野洲「ビワコドーターズ」店長・中川さん

 天井からつり下がる漁灯に、木船の陳列棚。外には風見鶏ならぬ「風見ナマズ」。野洲市菖蒲の琵琶湖近くに、一見、カフェのような湖魚店「ビワコドーターズ」はある。

 店長の中川知美さん(44)が「若い人にも湖魚のおいしさを伝えたい」と、2016年に実家の小屋を改装してオープンさせた。祖父母と両親は漁師で、幼い頃から食卓には湖魚が並んでいた。エビ豆やアユの煮物など、販売する商品のほとんどで両親が捕った湖魚を使い、ふなずしは父が漬けたものだ。

 店名は直訳すると「琵琶湖の娘たち」。祖母と母から受け継いできた味を残したいという願いを込めた。

 若者に手にとってもらうために、瓶詰にしておしゃれにしたり、ふなずしのにおいを抑えて食べやすくしたり。「ふなずしサンド」「琵琶湖のえびパン」などパン店と協力してアレンジした商品も並び、インスタグラムでも発信する。

 当初、両親は店を出すことに、「おしゃれにしたところで」「立地が不便」と心配した。確かに、最寄り駅から車で約20分かかる。

 「わざわざじゃないと来てもらえない場所だけれど、どうしても行きたいと思ってくれたら来てくれるはず」。狙い通り、県外からも「一度湖魚を食べてみたい」と客が訪れるようになった。

 店内でふなずしサンドを食べて、ふなずしを買っていく人。期間限定で販売していたヒウオの丼を食べ、「めっちゃおいしいやん」とうなった若い男女……。小さな店舗に笑顔が広がる瞬間がうれしい。

 「その言葉、待ってたでって感じ」。中川さんは少しずつ手応えを感じながら願う。湖魚が暮らしに、身近なものになりますように。(豊嶋茉莉)

61016 0 未来のオウミ 2019/01/04 05:00:00 2019/01/04 05:00:00 冬の琵琶湖で、漁船を操縦する中村さん(高島市で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190103-OYTAI50030-T.jpg?type=thumbnail

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