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改修中の古民家「きゃんせの場」の前で住民と談笑する原さん(右端、長浜市で)
改修中の古民家「きゃんせの場」の前で住民と談笑する原さん(右端、長浜市で)

 ◇町の魅力 都会の学生と探る

 ◇長浜・田根地区

 昨年12月中旬。長浜市の田根地区にある築約120年の古民家で、親子連れら約20人がポップコーンを手に映画を楽しんでいた。住民の中に、原有璃さん(22)がいた。

 大学を休学し、地域活性化を担う集落支援員として活動中で、イベントを企画した一人だ。「みんなで笑って、ちょっと泣いて。温かな空間になった」とほほ笑んだ。

 山に囲まれ、田んぼが広がる田根地区には、約1600人が暮らす。65歳以上の割合は37%を超え、全国にある過疎地の一つといえる。しかし、他の地域と違うところは、“都会の学生さん”たちが頻繁に来ること。そして、町のことを一緒に考えることだ。

 少子高齢化による人口減や空き家の増加など、地区が抱える課題を解決しようと、2007年から慶応大の小林博人教授(57)(建築設計)の研究会と「田根地区・地域づくり協議会」が、建築やまちづくりの視点から活性化策を探る「田根プロジェクト」を始めた。

 活動拠点、そして、宿泊施設としても使えるようにこの古民家の改修も始めた。名前は「きゃんせの場」。地元の方言で「いらっしゃい」という意味だ。

 毎年、学生たちが泊まり込み、地元の住民や高校生と一緒に作業をする。使われなくなった醤油樽しょうゆだるを活用して風呂にしたり、山里の風景が一望できる高さ2・3メートルの3枚のガラス戸を設けたり。地元産の合板で簡易ベッドも作った。実験的に関東の大学生向けに体験ツアーも開いた。

 東京都出身の原さんは1年の時からプロジェクトに参加し、何度も足を運ぶうちに田根に魅了された。豊かな自然と古民家が並ぶ“日本の原風景”が広がり、住民たちは家で育てた大根や白菜を近所の人たちと分け合う。でも、住民らは「ここには何もない」と口にした。

 「住民のあふれる人情味も貴重な資源。こんなにも美しい地域を、もっと多くの人に知ってほしい」

 活動に専念するために18年4月から休学し、10月からは地区の空き家に住む。古民家で移住や田舎暮らしを希望する人を対象にした1泊2日のツアーを計画する。自分の将来はまだわからないが、ここが、かけがえのない場所になったことは確かだ。

 ◇

 学生たちを受け入れたことで、住民にも変化が起きた。毎年訪れる学生たちを歓迎し、カレーライスや地元でとれたイノシシやシカ肉入りのバーベキューなどでもてなす。古民家改修のワークショップや地区の魅力を再認識する映画作りなどを通じて町の未来を考えるようになった。

 協議会代表理事の川西章則さん(71)は「地区にはよそ者を受け付けない閉鎖的な考えが根強かった」という。それが、学生と直接触れあい、「活性化させたい」という強い思いを感じたことで、「何かが変わる」という期待感が生まれた。

 地区ではここ数年で県内外からの移住が3件あった。「当たり前だと思っていた田んぼや畑、風景が、外から見ると魅力になることを、学生さんたちに気づかされた」と話す。

 10年を超える活動を支えてきた小林教授も、住民たちがふるさとに対する誇りを、取り戻してきたように感じている。

 「最終目的は、住民自らで地区を持続的に存続させていくこと」。きゃんせの場や他の古民家を有効活用できる仕組みができ、一定のめどがつくまではプロジェクトを続けたいと思う。

 ◇

 きゃんせの場は今も「改修中」だ。学生と住民らの手によって、ゆっくりと変わり続ける。完成はないのかもしれない。それは、まちづくりと重なる。(田上秀樹)

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61136 0 未来のオウミ 2019/01/05 05:00:00 2019/01/05 05:00:00 改修中の古民家の前で住民と談笑する原さん(右端)(長浜市谷口町で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190104-OYTAI50031-T.jpg?type=thumbnail

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