<5海外へ>数百年続く石垣技術

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歴代の穴太衆が積んだ石垣に触れ「後世につなぎたい」と語る粟田さん(大津市で)
歴代の穴太衆が積んだ石垣に触れ「後世につなぎたい」と語る粟田さん(大津市で)
隈研吾さんが設計した「ロレックスタワー」を巡る穴太積み=2017年7月撮影
隈研吾さんが設計した「ロレックスタワー」を巡る穴太積み=2017年7月撮影
米国で初めて積んだ石垣。前列中央の帽子姿が粟田さん=2010年撮影、いずれも粟田さん提供
米国で初めて積んだ石垣。前列中央の帽子姿が粟田さん=2010年撮影、いずれも粟田さん提供

 ◇堅固な「穴太積み」 広める

 こけむす石垣が美しい大津・坂本。大小様々な自然石をほとんど加工せずに積む「穴太あのう積み」の前で、戦国時代以来の技術を今に伝える「粟田建設」社長の粟田純徳さん(50)は静かに口を開いた。

 「伝統は絶やせない。後世につなぐためにも海外に出向くんです」

 織田信長が丈夫さに驚き、安土城に採用したという穴太積み。その技術を持つ石工集団「穴太衆」は各地の城や寺社などの石垣を築いた。時は移ろい、現在は粟田家だけが技を継ぐ。粟田さんは15代目の「かしら」だ。

 2005年に社長に就いたが、取り巻く環境は厳しい。かつては技術力や実績で受注できた。現代は経済性、競争性が重視される。ゼネコンや地元業者に有利な入札で苦戦し、仕事は激減した。「こちらは数百年のノウハウがあるのに」。小学4年の長男(10)に継げるか。不安は尽きない。

        ◇

 そんな中、転機が訪れた。

 「米国で石垣を紹介したい。造ってほしい」。米国の石工関係者の招きで10年、西海岸のベンチュラに赴いた。「外国人に分かるのか」と半信半疑だったが、約3週間滞在し、米国人石工らとともに高さ約2・5メートル、幅約4メートルの石垣を築いた。

 セメントで固める工法に慣れた米国人らは「積むだけで大丈夫か?」と不思議そうだった。そんな参加者に「日本は地震が多いけど、400年たっても崩れてへん」「コンクリートは長くて100年。潰れたら産廃になる。長い目で見たら石垣の方が安い」と切り返した。

 石の重心を絶妙に探って積む技と造形美。そして粟田さんの自信――。皆が次第に魅せられた。

 一緒に石を積んだシアトル在住の彫石家・児嶋健太郎さん(43)もその一人。「こんなに美しい石の造形は見たことがない。日本の職人技にほれこんだ。もっと広めたい」。粟田さんも手応えを感じた。「殺風景な外国の街でも意外と調和する。いけるんと違うか――」

        ◇

 米国で縁が広がった。

 児嶋さんが奔走し、4年後、シアトルの日本庭園で石垣を築く講習会を実現させた。粟田さんや参加者が高さ約3メートル、幅約8メートルの石垣を造り、見晴らし台として親しまれるようになった。16年にはポートランドの日本庭園にも採用された。

 この石垣を見た世界的建築家・隈研吾さん(64)は感激した。「20世紀の建築は『整然としたデザインが良い』とされたが、私は違う。穴太積みは雑然としているように見えるが、実は緻密ちみつ。『私と似ている』と思った」

 そして17年。隈さんは自ら設計した時計メーカー・ロレックス米国支社の「ダラス・ロレックスタワー」に穴太積みを採用。粟田さんらはビルの3面を約50メートルにわたり、最高約5メートルの石垣を巡らせた。近代的なビルとも調和する石垣。隈さんは「堅固さと美しさを兼ね備え、世界に誇れる技術。また穴太衆と仕事がしたい」と話す。

        ◇

 伝統に培われた石匠せきしょうの技が、異国で輝きを放ち始めた。隈さんはエールを送る。「日本の建築分野では、構造や美の本質を理解しようとする動きが出始めている。石垣などの分野でも、穴太衆に再び脚光を浴びる日が来てほしい」

 粟田さんも諦めてはいない。「海外で穴太積みが評価され、『逆輸入』のように日本でも注目を集めたい。そのためにも技を磨き続け、魅力を訴え続ける」と語った。(終わり、渡辺征庸)

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61197 0 未来のオウミ 2019/01/06 05:00:00 2019/01/06 05:00:00 歴代の穴太衆が積んだ石垣に触れ「後世につなぎたい」と語る粟田純徳さん(大津市で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190105-OYTAI50028-T.jpg?type=thumbnail

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