駅舎再生 にぎわい拠点に
完了しました
近江鉄道


1914年築の木造駅舎、近江鉄道・日野駅(日野町)には、交流施設「なないろ」が併設されている。日によってカフェになったりバーになったり。住民らが「日替わり店長」を務め、地域の活性化に一役買っている。
2月上旬、駅舎にサックスやフルートの音色が響いた。月数回、趣味のバンド活動を兼ねてカフェ「茶店ちゃちゃ」を営業する岡雅子さん(63)らによる演奏だ。岡さんは「他府県から訪れた音楽家が飛び入り参加することもある」と笑顔を見せる。
日野駅が、住民や利用客の憩いの場となったきっかけは、駅舎解体の計画が浮上した2015年のこと。基礎部分の腐食、雨漏りなど老朽化が目立ち、近江鉄道は簡易な駅舎への建て替えを検討していた。
町内唯一の鉄道駅として長年親しんできた住民は反対。町と商店主、住民らが話し合いを重ね、16年度から「再生プロジェクト」を進めることになった。
町の予算で、昔の面影を残しながら耐震改修などを施して駅舎を保存、再生した。17年10月に観光案内施設を兼ねた「なないろ」がオープン。住民ら約20人でつくる一般社団法人「こうけん舎」が運営している。
20年には、レトロな駅名標や、国内で数台しか現存しないという車両移動機「タッグローダー」などを集めた鉄道資料展示室が完成した。全国から8500万円もの寄付を集め、1億3700万円の事業費でプロジェクトを実現した。
近江鉄道ではほかにも、愛知川駅(愛荘町)、多賀大社前駅(多賀町)など6駅で、駅舎の一部が名産品の展示や朝市などに活用されている。
こうけん舎代表理事の西塚和彦さん(63)は「駅は多くの人が出入りするので、にぎわい作りの拠点として便利。活動を通じて、近江鉄道がより身近な存在になり、利用促進につながればうれしい」と話している。