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近江牛

 神戸、松阪とともに日本三大和牛に数えられる近江牛。数あるブランドの中でも歴史が古く、それを生んだ土壌は江戸時代にさかのぼる。豊かな自然環境と牛を愛した先人たちの情熱と技術があいまって生み出される「芸術品」だ。ふるさと納税の返礼品としても人気が高い。(中村総一郎)

江戸期から食用も

大切に育てられている近江牛(竜王町の毛利志満牧場で)
大切に育てられている近江牛(竜王町の毛利志満牧場で)
竹中久次、森嶋留蔵の足跡を説明する森嶋篤雄さん(近江八幡市のレストラン毛利志満で)
竹中久次、森嶋留蔵の足跡を説明する森嶋篤雄さん(近江八幡市のレストラン毛利志満で)
牛肉を受け取った徳川斉昭が彦根藩主・井伊直亮に送った礼状=彦根城博物館提供
牛肉を受け取った徳川斉昭が彦根藩主・井伊直亮に送った礼状=彦根城博物館提供

 かつての日本では牛は農作業用の家畜で、肉食を禁じる意識が定着していた。しかし、彦根藩内では、牛を解体して牛皮を武具や道具に利用した職人集団が存在し、解体後の肉を干し肉やみそ漬け、かす漬け、丸薬にしていたことが分かっている。

 彦根城博物館によると、高い栄養価や滋養強壮を期待していたといい、彦根藩は江戸時代の寛政年間(1789~1801年)以降、幕府や大名から所望されて牛肉を贈っていたことが記録に残る。前水戸藩主・徳川斉昭が1849年(嘉永2年)、彦根藩主・井伊直亮に宛てた礼状もある。

 同博物館副館長の渡辺恒一さん(54)(日本近世史)は「近江国では農作業や運搬に用いる牛が多く飼われ、飼養や牛皮などの活用の技術が培われた。その土壌が彦根藩の食用牛肉の生産につながったと考えられる」とみる。

明治期に販路開拓

 庶民に肉食が広まったのは明治時代以降のことだ。東京・浅草に牛肉卸小売業と牛鍋店を兼ねた「 米久よねきゅう 」を開いた竹中久次は竜王町出身。米穀商だったが、東京や横浜で牛肉の需要が高まるとみて、明治維新直前の1865年に家畜商を始めた。

 「久次は農家とのつながりを生かし、農耕の役目を終えた牛を集めることができた。先見の明があり、東京へ供給する道を開いた」と話すのは、近江牛の肥育、精肉業、レストラン「毛利志満」を営む森島商事社長の森嶋篤雄さん(72)。東京へ拠点を移した久次を地元で支えた実弟・森嶋留蔵の子孫にあたる。

 当初は東京、横浜まで徒歩で牛を引いて運搬し、やがて船便を利用する業者も現れた。1889年の東海道線全通後は、現在の近江八幡駅から鉄道輸送されるようになり、その頃から近江産の牛と認知され始めたという。明治後半には年間約6000頭が東京などに出荷されるように。東京で1914年に開催された全国大博覧会では、蒲生郡の牛が1位に輝いた。

 竜王町は2016年10月、「近江牛発祥の地」を宣言。小学生の副読本には久次の活躍が紹介されている。森嶋さんは「農家や畜産、食肉業界の先人たちが近江牛の歴史を築いた」と語る。

海外にも進出

 県によると、1910年に県内で飼育されていた肉用牛(農耕用からの転用も含む)は約1万7000頭。ピークとみられる55年は約3万5000頭に。県畜産課副主幹の杉本みのりさんは「かつては農耕に使った牛なども肥育していたが、昭和30~40年代に農業の機械化で減少。その後は肉牛に特化した肥育への転換が進んだ」と話す。

 現在肥育されている黒毛和牛は約1万4400頭だが、その間も肥育技術を高め、日本初というブランド牛振興団体「近江肉牛協会」(1951年設立)を中心に知名度アップに向けた活動も展開。2017年には、歴史や伝統、品質の高さ、地域との結びつきが評価され、農林水産省が認定する地理的表示(GI)保護制度に登録された。

 県畜産振興協会の渡辺千春理事は「肉牛肥育の先進地で育まれてきた近江牛は、日本の牛肉食文化に大きく貢献してきた」と胸を張る。09年頃からは海外に目を向ける事業者も現れ、現在はシンガポール、ベトナム、台湾など7か国・地域に肉が輸出されている。

          ◇

 ニュースを分かりやすく伝える「 Newニュー 門@滋賀」。今回は「近江牛」をテーマに、1週間連続で掲載します。

ふるさと返礼品 根強い人気

県、近江八幡市対立も

 近江牛は、ふるさと納税でも人気の返礼品だ。県内最多の肥育数を誇る近江八幡市が2014年度に返礼品に加えたところ、同市は同年度以降、県内市町別の寄付額トップを維持。19年度は過去最多の23億6737万円の寄付があった。市の担当者は「ネームバリューがあり、地場産品、産業として極めて重要だ」と話す。

 県は4月、地場産品が少ない地域を含めて県内すべての市町が近江牛を返礼品として扱うことができるよう「地域資源」に認定。これに対し、産地以外の扱いが増えるとブランド価値に悪影響が出かねないとして近江八幡市が総務相に審査を申し出る事態に。両者はその後、品質管理方法などで合意。市は6月10日、審査を取り下げた。

 ◆ 近江牛とは  滋賀県内で最も長く飼育された黒毛和種を指す。霜降り度合いが高く、芳醇(ほうじゅん)な香りと脂質の口溶けのよさが特長だ。2020年2月現在、12市町の89農場で約1万4400頭が飼育され、このうち9割を近江八幡市、竜王町、日野町、高島市、東近江市の上位5市町が占める。

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2137372 0 New門@滋賀 2021/06/19 05:00:00 2021/06/19 05:00:00 2021/06/19 05:00:00 大切に育てられる近江牛(竜王町の毛利志満牧場で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210618-OYTAI50030-T.jpg?type=thumbnail

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