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きれいな水 40年の成果…びわ湖の日

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水質改善も漁獲量減

琵琶湖大橋周辺から琵琶湖の北湖を望む。この40年で水質浄化が進んだ(6月30日、本社ヘリから)=長沖真未撮影
琵琶湖大橋周辺から琵琶湖の北湖を望む。この40年で水質浄化が進んだ(6月30日、本社ヘリから)=長沖真未撮影
定置網を引き揚げる松沢さん。琵琶湖の漁獲量は年々減っている(野洲市沖の琵琶湖で)
定置網を引き揚げる松沢さん。琵琶湖の漁獲量は年々減っている(野洲市沖の琵琶湖で)

 琵琶湖の環境保全に取り組むびわ湖の日を県が定めてから、1日で40年となった。工業・生活排水が問題視された「近畿の水がめ」は、この間の官民の取り組みで水質が大きく改善された。一方、漁獲量は回復せず、貧栄養化や温暖化による生態系の乱れなど、新たな課題も浮上している。(矢野彰)

■貧栄養化など課題も

 琵琶湖で半世紀にわたり漁業を営む野洲市の松沢松治さん(75)が6月30日朝、定置網を引き上げた。目当てのアユは3キロ程度で、「50キロはとれないと商売にならない。昔はいろんな魚が網いっぱいにとれたのに」と表情はさえない。

 琵琶湖は高度成長期、窒素、りんなどが増えて富栄養化が進み、1977年5月には大規模な赤潮が発生するまで水質が悪化した。

 その後、りんなどを含む合成洗剤の使用禁止を目指した「石けん運動」などの市民活動、県条例による排出規制や下水道整備で水質は徐々に改善。琵琶湖の北湖では2019年度に全窒素が79年度の観測開始以来初めて環境基準(1リットルあたり0・20ミリ・グラム)をクリアし、20年も同水準を保った。

 一方で、漁獲量が回復する兆しは見えない。1万トンを超えた1955年をピークに減少し、19年は811トンと1割以下に落ち込んだ。特産のアユは91年に2000トン近くだったが、19年は375トン。57年に6000トン以上あったセタシジミは、今は数十トン程度だ。

 漁獲の減少は、湖岸整備が進んで魚の産卵場所や貝類の生息場所が減るなどの環境変化に加え、水質改善に伴う「貧栄養化」が一因とみられている。県は窒素やりんを栄養とする植物プランクトンの種類が変わり、食物連鎖の上位にいる動物プランクトンや魚介類の減少につながったとみる。

 同じ貧栄養化でイカナゴなどの水揚げが減った瀬戸内海では、沿岸の自治体が排水基準を緩和し、海中の栄養分を増やす取り組みが進められているが、琵琶湖は飲み水に使われるため、同様の対策は難しい。

 「水はきれいになったが、魚は戻らない現実にどう対処するか、悩ましい」と県琵琶湖環境部の三和伸彦技監。県は漁獲の回復を目指し、かつて多く生息した種類の植物プランクトンを増やす方策を検討する。

■温暖化で生態系に乱れ

 琵琶湖では、冬に酸素が豊富な表層の水が冷えて沈み、湖底に酸素を行き渡らせる「全層循環」という現象が79年度以降、県の調査で毎年確認されていた。しかし、18、19年度はこの現象が確認されなかった。

 専門家は、温暖化が原因とみる。この2か年は12~3月の気温が平年より0・5度以上高く、20年度の水温は平均9・1度と観測開始以降、最高だった。

 循環が長期間起こらないと、酸素不足で湖底の生物に影響が出ると考えられている。湖底の低水温を好むプラナリアの一種・ビワオオウズムシが、近年見つかりにくくなっているという。

 琵琶湖の環境を長年研究する立命館大総合科学技術研究機構の熊谷道夫教授(地球環境学)は「琵琶湖は地球温暖化の指標となる場所。このままだと遠くない未来に生態系に影響が出る」と警鐘を鳴らす。

■新たな県民運動

 県や市民団体などは、国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)にならい、2030年までの達成目標を定めたMLGs(マザーレイクゴールズ)を40年の節目に策定した。「豊かな魚介類を取り戻そう」「水辺も湖底も美しく」「温室効果ガスの排出量を減らそう」など13項目からなる。

 策定に関わったNPO法人「 あお いびわ湖」の村上悟代表理事は「私たちの暮らしが琵琶湖に影響を与えている状況は40年前と変わらない」とした上で、「かつては湖周辺の住民が環境意識を高めて水質浄化につなげたが、現代は温暖化などで課題がより複雑化し、簡単には解決できない。より幅広い立場の人たちに琵琶湖の大切さを考えてほしい」と訴える。

<びわ湖の日>  「せっけん運動」を機に、県が1980年7月1日、排水や合成洗剤の使用を規制する「琵琶湖の富栄養化の防止に関する条例」を施行。その1年後を「びわ湖の日」と定めた。毎年、湖岸の一斉清掃などが行われ、水質保全の大切さを確認する日になっている。

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2172884 0 ニュース 2021/07/02 05:00:00 2021/07/02 05:00:00 2021/07/02 05:00:00 水質浄化が進む琵琶湖。北東に向かって撮影(手前は大津市、琵琶湖半分より右側が守山市や野洲市)(30日午前10時17分、滋賀県で、本社ヘリから)=長沖真未撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/07/20210702-OYTNI50008-T.jpg?type=thumbnail

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