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転職重ね「天職」 主人公に投影

「介護ライオン」を出版した高田さん(彦根市で)
「介護ライオン」を出版した高田さん(彦根市で)

 高齢者施設で働くやりがいを伝えようと、社会福祉士の高田充さん(50)(栗東市)が、初めての小説「介護ライオン」を出版した。転職を重ねた末に「天職」に巡り合った来し方を主人公に投影したという。「心と心をつなぐ仕事だと知ってほしい」と願っている。(西堂路綾子)

栗東の社会福祉士・高田さん

 児童養護施設で育った男性が主人公。京都・祇園でホストをしていたが、暴行事件に巻き込まれ、すさんだ気持ちのまま湖国の高島市へ移る。だが、就職した老人ホームで女性職員から介護技術を一心に学び、入所者とのふれ合いや恋を経験するうちに、前向きな気持ちを取り戻していくストーリーだ。

 自身は大阪府八尾市出身。大学卒業後、自動車ディーラーや和菓子製造会社へ勤めたが、業績を上げることに追われ「頑張ろうとして心も体もすり切れた」。知人の紹介で京都市内の高齢者施設に再就職した時には30代半ばになっていた。

 「好んで就いた仕事ではなかった」はずなのに、入所者やその家族に接し、行政や医療とのつなぎ役として奔走するうち、「ありがとう」の言葉を掛けられることが増えた。「『負け組』と思っていた自分を、こんなにも必要としてくれる場所がある」。そんな思いが募り、通信教育で学んで40歳で社会福祉士の資格を取得した。

 一方で、介護の現場に「きつい仕事」という負の印象がつきまとう現実も感じていた。そんな中、2019年春、僧籍を持つ社会福祉士の男性と知り合う。

 福祉の仕事や介護を受ける人らのイメージを変えようと、ラップやポップスに前向きなメッセージをのせて活動する音楽団体「エンパワーメントレコーズ」(彦根市)のメンバーだった。彼らの活動に触発され、好きな小説で発信しようと思い立った。

 介護する側、される側の心情をうまく表現しようと、勤務先の同僚や入所者に原稿を見せては 推敲すいこう を重ねた。趣味の釣りを通じて親しんできた琵琶湖や高島市の渓流など、湖国の描写もふんだんに取り入れ、2年がかりで完成。タイトルは、金髪の主人公をイメージしたもので、「見た目で人を判断しないで」との思いを込めた。

 コロナ禍で入所者と家族の面会を制限せざるを得ない中で、どう寄り添うかを考え続けている。最近亡くなった入所者の家族から「小説をひつぎに入れました」と聞き、ちょっぴり報われた気がした。「この仕事の意義が少しでも伝われば」と話している。

 四六判196ページ。税込み1320円。問い合わせはリトルズ(075・708・6249)。

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2184782 0 ニュース 2021/07/07 05:00:00 2021/07/07 05:00:00 2021/07/07 05:00:00 「介護ライオン」を出版した高田さん(彦根市で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/07/20210706-OYTNI50040-T.jpg?type=thumbnail

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