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彦根に避難 ウクライナ女性
ウクライナから彦根市に避難したイリーナ・ヤボルスカさん(50)、母のギャリーナ・イバノバさん(80)と、道中の空港で2人を手助けした「サトウさん」の再会が実現した。大阪府吹田市の高校非常勤講師、佐藤栄一さん(54)で、煩雑な入国手続きに付き添うなど、日本語や英語が話せない2人を献身的にサポートした。8日に対面したイリーナさんたちは「困難な時に手を差し伸べてくれてありがとう」と抱擁を交わした。(松久高広)
声かけ入国手続き助ける


イリーナさんたちは3月下旬、ウクライナ東部のハルキウ(ハリコフ)から、彦根市に住む娘のカテリーナさん(31)夫妻を頼って来日。直後の記者会見で「サトウさん」と名前を挙げ、感謝を述べていた。
佐藤さんはアマチュアの「芦屋交響楽団」(兵庫県芦屋市)のホルン奏者で、研さんのため定期的にチェコを訪れている。
3人の出会いは同21日、オランダ・アムステルダムの空港。イリーナさんらはポーランド、佐藤さんはチェコから乗り継ぎ、関西空港行きの飛行機の搭乗口で居合わせた。すぐ後ろでウクライナ語が聞こえ、佐藤さんから2人に、単語が似ている近隣国のチェコ語で「ドブリーデン(こんにちは)」と話しかけた。
関空行きの便は韓国・
関空には22日午後5時50分頃に到着した。入国者はそれぞれスマートフォンに新型コロナウイルス対策アプリを入れる必要があるが、2人にはインストールできるスマホがなかった。佐藤さんは検疫所の係官と交渉し、料金を立て替えて2人のためのスマホをレンタルすることで解決した。
道中で「ハルキウから来た」「爆弾が落ちてきた」などの境遇を聞いた。佐藤さんは手荷物受取所でカートを用意しようとしたが、2人には機内に持ち込んだバッグなどの手荷物が全て。「戦禍を逃れる途上なのだと改めて実感した」という。
イリーナさんらには、佐藤さんがチェコ語で話す「心配しないで。私が最後までサポートします」という言葉が心強かった。荷物を持ち、水を買ってくれるといった気遣いに感動し「助けがなければ日本にたどり着けなかった」と語る。
到着口で娘夫婦と合流できたのは午後10時過ぎ。飛行機を降りてから4時間あまりが経過していた。
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今月8日、兵庫県立芸術文化センター(西宮市)で開かれた楽団のコンサート。出演者の佐藤さんは、空港で連絡先を交換したカテリーナさんの夫・菊地崇さん(28)を通じて一家を招待し、関空以来となる対面が実現した。
コンサート直前、イリーナさんは感極まった表情で「また出会えてうれしいです」と伝えた。クレープで食材を包むウクライナの国民食「ブリンチキ」のキッチンカーを計画中で、「楽団の皆さんに」と持参。受け取った佐藤さんは「必ずお店に行きます」と約束した。この後、一家は楽団の演奏を鑑賞した。
佐藤さんは「私もチェコに様々な国籍、民族の友人がおり、多くの人に助けられてきた。ウクライナやロシアにとどまらず、全ての国の人が安心して生活できる世界になってほしい」と願っていた。
キッチンカーCF 目標360万円達成
イリーナ・ヤボルスカさんがウクライナの家庭料理「ブリンチキ」を販売するキッチンカー出店のため準備資金を募っていたクラウドファンディング(CF)が、12日に目標の360万円を達成した。資金は必要機材の購入などに充てる予定で、5月末に国宝・彦根城周辺でのプレオープンを目指す。
得意な料理を生かし、自立した生活の実現と、日本で受けた手厚い支援に対する「恩返し」をしようと企画。ブリンチキは、包む具材によってデザートにも食事にもなる。
CFは2日から仲介サイト「キャンプファイヤー」でスタート。達成時点で約500人の支援が集まり「家族で食べに行きます」「ウクライナの人々に平和が訪れますように」などのコメントが寄せられた。軌道に乗れば他の避難民らと協力し、全国で2、3店舗目の出店も視野に入れている。