<人あり>最新技術で「ご当地作品」

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トルクス社長・山田宏道さん
トルクス社長・山田宏道さん

 ◇奥出雲にUターンITで盛り上げる 山田 宏道さん43

 専用のゴーグルをつけると、乗り込んだ車両が動きだし、ガタンゴトンと音を立てて鉄路を走る。そして車両は空へと飛び上がり、山河を駆け抜ける――。

 2018年3月末で廃線になったJR三江線を仮想現実(VR)映像で楽しむシステムを開発した。同年10月に旧口羽駅で開かれたイベントでは約150人が体験し、「線路や江の川を初めて見る角度から楽しめた」などと好評だった。「最新技術で地域を盛り上げたい」と話す。

 旧仁多町(現奥出雲町)で育った。中学生の頃、家庭用テレビゲーム機が大流行したが、家では買ってもらえなかった。代わりに自分でプログラミングをしてゲームを作れるパソコンを手に入れた。

 小遣いで買った解説本を片手に、プログラミング言語を写経のように入力し、ゲームを作る日々。「どうやったらもっと面白いゲームを作れるんだろう」と思ったが、プログラミングを教えてくれる人はいない。興味はあるのに分からないままだった。

 IT(情報技術)の世界が広がったのは島根を出て、千葉大学へ進学後。1995年にアルバイトを探す中、「どうせなら好きなことを」と思い浮かんだのはやっぱりパソコン。雑誌をコンピューターで編集する作業を始めた。職場はパソコン好きが集まっており、合間に知識や技術を教え合うのも楽しかった。

 卒業後はプログラミングを学ぶ私塾を経て、99年、都内のゲーム制作会社に入った。2004年にフリーのプログラマーになると、12年には会社を設立。ウェブサイトの制作や、スマートフォン向けアプリの開発、VRゲームの企画など、ITの進歩に仕事を対応させていった。

 転機は祭りで奥出雲に帰省した15年夏。実家は祭りの当番を翌年に控えていた。妻・友子さん(43)の「戻ってきてもいいんじゃない」という言葉に背中を押され、16年4月にUターンした。

 帰ると県内の男性から連絡があった。「VRに興味があるけど島根ではやる人がいない」。中学時代の自分を思い出した。「興味があっても教えてくれる人や仲間がいないとわからない」

 半年後、仕事の傍らVRなどを勉強する「地域おこしVR(現在はXR)研究会」を設立した。数か月に1度、大学生や社会人ら20人ほどが自身の持つ最新技術を紹介、情報を共有したり体験したりする。

 「ITに興味がある人は都会に行ってしまう。島根でも仲間とITを楽しめる環境があれば」とイベントも主催。17年のゲーム開発イベントでは、安来市の安来節にちなんで「どじょうすくい踊り」を体験するVRゲームが生まれた。18年には制限時間内でドジョウをすくった数を競うゲームとして製品化、山陰各地のイベントで楽しまれている。

 目指すのは、最新技術で作る面白い〈ご当地作品〉。「それがよそにないものだったら、そこの人たちで地元を盛り上げられる」。地域が再び活力を取り戻すきっかけとして、ITの可能性を追い求める。(中瀬有紀)

 ◇<私の1冊>福沢諭吉著 斎藤孝訳「現代語訳 学問のすすめ」

 有名な「天は人の上に人を造らず……」という冒頭部は一見平等を説いていますが、学習しなければ差は生まれると、学ぶことの大切さを説いた本です。37歳の時に手にして、衝撃を受けました。とても面白い。それまで気づいていないことがたくさんありました。そしてこれが150年ほど前に書かれた内容だということにショックを受けました。今読んでも全く色あせていないんです。

 技術はどんどん進歩していて、現代の人は昔の人より優れているという印象がありました。でも人は時代が変わっても変わらないと気づきました。技術がやるべきことはまだまだあります。学び続けることが大事ですね。

無断転載禁止
19570 0 人あり 2019/01/14 05:00:00 2019/01/21 13:30:53 トルクス社長・山田宏道さん https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190113-OYTAI50000-T.jpg?type=thumbnail

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