締まった赤身 上品な脂・・・安来のイノシシ肉

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イノシシ肉を部位ごとに処理するひろせマタギ倶楽部のメンバーたち(安来市広瀬町で)
イノシシ肉を部位ごとに処理するひろせマタギ倶楽部のメンバーたち(安来市広瀬町で)

 ◇血抜き、解体 猟師の技光る

 鮮やかな赤色のスライス肉が盛りつけられたイノシシ鍋。安来市古川町のさぎの湯温泉にある旅館「安来苑」で約40年前から提供されているこの鍋の主役は、地元の「ひろせマタギ倶楽部くらぶ」(13人)が同市広瀬町で加工したイノシシ肉だ。

 「これがモモ、ここがロース。そしてこの辺りがサーロインとバラ」。同倶楽部会長の村本博志さん(63)が食肉処理場で、作業台に並ぶ肉の塊を見ながら教えてくれた。

 イノシシは標高の低い山に多く、県東部の広瀬町は約9割が山林と自然豊かで頭数も多いという。同処理場では、猟銃やわな猟で捕獲されてすぐに血抜きされたイノシシを1キロあたり800円を目安に、年間20頭以上をハンターから買い取っている。

 0~3度に設定された冷蔵庫で2、3日熟成し、うまみを引き出した後、部位ごとに分けて真空パックにし、冷凍の精肉として飲食店や販売店に出荷する。

 村本さん自身もハンター歴43年のベテランだ。10人ほどの仲間と山を回り、狩猟犬を使って仕留めるが、猟は長い時で10時間近くかかるという。「雪が降ったら条件がいい。足跡がはっきりして『この山には何頭か入っちょう』ってわかるから」と話す。

 イノシシ猟は昔から各地で盛んに行われた。県内では縄文時代の地層から石器とともにイノシシの骨が出土し、太古から捕獲して食べられてきたことがわかる。仏教の影響で肉食を避ける意識のあった江戸時代にも「山くじら」と呼ばれて食された。

 近年は、稲などを荒らすやっかいな存在でもあり、農作物被害額の過半数がイノシシによるものだ。捕獲を促すため県は15年前から冬の狩猟期間を1か月延長して11~2月にし、近年は年約5000頭が捕獲されている。

 「島根で食べ方と言えば、昔から猟師料理として鍋にしてきた。肉は少し大きめにぶつ切りにして、みそ味のだしにごろっと入れてね」。そう語るのは、日本人が昔から食べた野生肉の利用を図るNPO法人伝統肉協会(東京都)の石崎英治代表(40)。「山陰は山が深くてイノシシの運動量が高く肉がしっかりしている。赤身のおいしさは島根が一番」と太鼓判をおす。

 実際、ひろせマタギ倶楽部が処理した肉は昨年1月、岐阜県で開催された「第1回日本いのしし祭り」で準グランプリに輝いた。村本さんは「脂が口の中に残らないで溶けてしまう。脂の質が違う。臭くて硬いとのイメージがあるのは、処理の仕方がよくなかった昔の影響だよ」。そう言って、ぼたん鍋やしょうが焼きにはロースや三枚肉、ハンバーグにはミンチにして脂を混ぜるとおいしいとアドバイスしてくれた。

 すぐに食べたくなって、安来苑へ向かった。予約をすれば昼にレストランでイノシシの大鍋(税別4000円)や小鍋定食(同2000円)が食べられる。

鮮やかな赤身と脂身が交わったスライス肉が盛りつけられたイノシシ鍋の定食(安来市古川町の旅館「安来苑」で)
鮮やかな赤身と脂身が交わったスライス肉が盛りつけられたイノシシ鍋の定食(安来市古川町の旅館「安来苑」で)

 白菜や春菊、ゴボウ、エノキダケなどの上に、スライスしたロース肉を盛りつけ、赤みそにしょうゆやみりんで味付けしただしで煮る。リンゴやショウガなどでつくる自家製だれにつけて食べると、引き締まった肉のうまみが口の中に広がった。思ったよりくせがない。

 安来苑を経営する安藤宗久さん(27)は「木の実を食べる野生の動物だから歯ごたえがあって力の湧くような味わいをしている。野生ならではのおいしさを知ってもらいたい」と力を込めた。(中筋夏樹)

無断転載禁止
4570 0 食彩記 2018/01/28 05:00:00 2018/01/28 05:00:00 作業台の上で手際よくイノシシを部位ごとに切り落としていくひろせマタギ倶楽部のメンバーら(安来市広瀬町で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180127-OYTAI50000-1.jpg?type=thumbnail

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