「川魚の女王」すしや雑煮に・・・高津川のアユ

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釣り上げたアユを満足げに見つめる椋木さん。川面の色などでアユの群れがわかるという(津和野町で)
釣り上げたアユを満足げに見つめる椋木さん。川面の色などでアユの群れがわかるという(津和野町で)
すし、甘露煮、雑煮など、アユを堪能できる数々の料理
すし、甘露煮、雑煮など、アユを堪能できる数々の料理

 ◇家庭料理 爽やかさっぱり

 7月中旬に訪れた益田市内の高津川は、豪雨で濁流がうねっていた数日前の光景がウソのような静けさと透明さを取り戻していた。

 快晴の下、橋の上から糸を垂らすアユ釣りの「名人」椋木章夫さん(60)(益田市)は長袖シャツにサンダル履き。さおはリール付きの海釣り用だ。ベストや胴長を身につけ、長大なさおを操る見慣れた太公望たちとの違いに驚いた。

 アユ釣りは小学校に上がった頃からという椋木さんは、おとりのアユを使う友釣りもするが、この日は複数の針をつけた仕掛けを群れに投げ入れる「みがけ」などと呼ばれる方法で釣る。

 「大きな群れが上がってきた」。釣果を求めて津和野町へ移動後、橋の上から川面を眺めていた椋木さんが声を上げた。さおを振り、仕掛けを川下へと飛ばす。

 「よし」。間もなくリールを巻き上げると元気のいいアユがかかっていた。その後15分で約15匹を釣り上げた。

 「アユが見えればどこでもできる。向こうから引っかかってくれる」とこともなげに言う。記者にアユの群れは見えなかったが、椋木さんは川面の動きや色の変化をとらえているという。椋木さんを師匠と仰ぐ佐堂正義さん(69)(同市)は「水面を跳ねれば居場所はわかるのですが……。だれもまねできません」と感心する。

 「川魚の女王」とも呼ばれるアユ。県西部を流れる全長81キロの高津川は清流として知られ、6~9月のシーズン中は県外からも釣り客が訪れる。

 高津川のアユが特別だったことは、中世の益田を治めていた益田氏ゆかりの古文書「益田家文書」からもうかがえる。1568年に毛利氏の居城で、益田氏が祝い膳で出した料理にも、アユの干物が使われたほか、アユ料理も出されていた。

 料理には当時、高級品だった北方産の昆布も使われており、市教委の中司健一主任(37)はアユを「益田の特産品として自信を持って出したのだろう」と推察する。

 一方、漁獲量の減少は深刻だ。高津川漁協の推計では2002年には127トンあったが、15年には30トンにまで減った。「子どもの頃は、産卵時期になると河原近くのアユの群れを竹ぼうきで掃きあげられるほどいた」と椋木さんはいう。

 「アユが減った」と釣り人は嘆くが、1日で何十キロも釣り上げる椋木さん。「足の向くまま気の向くまま」とアユを追って釣り場を渡る。

 高津川に近い佐堂さんの自宅で後日、アユづくしの家庭料理を作ってもらった。

 まずはアユずし。その日の未明に釣ったアユを開き、尾頭付きのまま酢でしめ、すし飯にかぶせたものだ。しめたアユは輝き、生き返ったかのようだ。鮮やかな色が退色しないように漬け過ぎないのがコツだという。弾力のある歯ごたえとあっさりとした味がすがすがしい。

 米にアユを載せて炊いた炊き込みご飯は、身をほぐし、混ぜ込んで食べる。魚の香りがいいアクセントになっていた。

 「焼きアユ」でだしをとった雑煮も並ぶ。焼きアユは自家製で、秋になると串刺しにしたアユを火鉢に立てて覆いをし、3日間かけてあぶるそうだ。

 アユといえばウルカ。内臓と塩を混ぜて作られ、独特の苦みが特徴だ。約5年前からかめに寝かせ、原料を継ぎ足したものと約20年前から同様にした2種類をいただいた。「20年物」は深みのある苦さで、癖になりそうだ。佐堂さんは「母がいり卵に入れてくれ、子どもの頃からなじんではいたが、好きになったのは大人になってから」という。

 どの料理も爽やかで、さっぱりとした味わい。やはり清流・高津川のたまものだった。(立山光一郎)

無断転載禁止
34307 0 食彩記 2018/07/29 05:00:00 2018/07/29 05:00:00 「この自然を生かさない手はない」とアユ釣りを楽しむ椋木さん(津和野町で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180728-OYTAI50005-T.jpg?type=thumbnail

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