さっぱり 夏カレーに最適・・・奥出雲のトマト
完了しました


◇冬場は甘~く 年中収穫
奥出雲町横田の山あいに広がる農産物生産販売「アグリベスト 奥出雲農園」のハウス。足を踏み入れるとじんわりと汗ばみ、整然と並ぶトマトの「木」からは、爽やかな酸味を思わせる香りがほのかに漂う。
幹は直径1センチほど。水耕栽培で、発泡スチロールに包まれたベッドから1メートル以上に育つ。青々とした枝葉の陰に、中玉トマト「シンディースイート」がたわわに実る。「ヘタが取れないように注意しながら収穫しています」。つやつや光る実を丁寧に摘み取った同園スタッフの内田圭亮さん(23)が、真っ黒に日焼けした顔をほころばせた。
同園はハウス4棟計2・2ヘクタールでトマトを育てている。大玉の品種「桃太郎」などは0・8ヘクタールで、シンディースイートなどの中玉は1・2ヘクタールで栽培。一大産地の熊本県や四国、東海地方などの出荷ピークと重ならないよう、棟ごとに苗を植える時期をずらしている。
収穫は苗を植えて約2か月後から8か月程度。積雪と寒さが厳しい山間部にあるため11月から翌年4月頃には、ガスを使って内部を最低5~10度くらいに暖める。
仲卸業者を通じて関西や県内などのスーパーなどに並ぶほか、残りの0・2ヘクタールで作る分は外食チェーンなどで使用されているという。「消費者の好みや取引先の要望に合わせて、毎年、品種ごとの栽培面積も変えています」と、同園代表の藤原正樹さん(59)が教えてくれた。
◇
県農産園芸課によると、島根は1970年代後半頃に益田市でJAが共同販売を行うようになってから、トマトの産地として知られるようになったという。現在は県内全域で栽培され、農林水産省の野菜生産出荷統計によると、2016年の県内の生産量は家庭菜園分も含めると3170トンになる。
また、同課によると、県内全体で野菜の栽培面積が減少傾向にある中、トマトの栽培面積は1970年代後半から横ばい傾向にある。手軽に食べられることなどから、消費者の人気が高い作物とみている。奥出雲町は標高が高く、気温も低いことから、トマトの木が「夏バテ」しにくいという。同園は年間約200トンを出荷している。
トマトは冬場は甘く、夏場は水っぽい傾向がある。シンディースイートも、7、8月は熟成する前に色づくため糖度は3~5程度だが、「2、3月は、着果してから収穫されるまで木についている時間が長いため、糖度がフルーツトマトと同じぐらいの8~11くらいになる」と、スタッフの永田稔幸さん(25)。この時期は完売するほどの人気だ。
今年は酷暑に悩まされた。ハウス内の気温がすぐに40度を超え、花が咲いてもすぐに落下。例年は朝や夕方に活動して受粉を助けるミツバチも動きが鈍いという。
収穫後、熟してきたシンディースイートを口に入れると、みずみずしい夏の香りが広がった。内田さんのお薦めは、皮をむいたトマトを砂糖と酢で漬けたもの。「さっぱりと食べられ、(夏の)収穫作業も乗り切ることができる」と語った。
◇
徳島県藍住町出身のスタッフ西村結衣さん(25)に、トマトカレーの作り方を教えてもらった。
トマト400グラムを皮付きのまま4等分していため、好みの大きさに切ったタマネギやニンジン、ジャガイモ、ササミ肉などを入れる。水は加えず、トマトの水分で煮込み、市販のカレールーで味を調える。好みで皮をむいて一口大に切ったトマトや、エリンギやマイタケ、ブナシメジを加えてもよい。
早速、「特産の駅 おくいち」(奥出雲町下横田)で同園の中玉トマトを購入し、作ってみた。トマトの酸味とうまみが口中に広がる。あっさりしていて、暑い日でもお代わりできそうだ。西村さんは「トマトを思い切りたくさん使って、いつもと違う味を楽しんでほしい」と話す。
同園では一年を通じて収穫が続く。今度はあたり一面雪の中、ハウス内でオレンジ色に実る甘みが増したトマトを味わってみたい。(佐藤祐理)