茶碗 優美にふんわり

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「不昧公が今おられたらどうおっしゃるだろうか」。そんな思いで作陶に励む土屋さん(松江市玉湯町で)
「不昧公が今おられたらどうおっしゃるだろうか」。そんな思いで作陶に励む土屋さん(松江市玉湯町で)

 ◇不昧公のDNA<1>

 ◇「雲善窯」9代目 思い込め「秘伝の黒」に鶴

 白い釉薬ゆうやくがつやっぽい。すっぽりと手に収まる形。没後200年の不昧公忌の24日、松江市で開かれた茶会に使われた「布志名焼 雲善窯」9代目、土屋雲善さん(81)作の茶碗ちゃわんだ。

 「不昧公が育てた陶工の伝統を伝える茶碗なら、不昧公が生んだ文化の色合いを感じてもらえる」。席主の「不昧流不昧会」の高橋照子さん(71)は笑顔で話した。

 「不昧公は堅苦しさを嫌ったそうです」。土屋さんは言う。「今日の茶碗も抹茶のたてやすさと飲みやすさを一番に考え、見た感じと手に取った感じが一致するよう心がけました」

 雲善窯は、松江城の東にある「楽山焼」に携わっていた初代善四郎芳方が、不昧公の命で同市玉湯町布志名に移ったのが始まりだ。不昧公の教えで腕を上げた2代目の善四郎政芳が、「雲善」の号とひょうたん形の陶印を賜り、名を上げた。

 「2代目はきちょうめんだったようです。水差しを作る時、不昧公が『器用にてはしく、不器用にやわらかく』という禅問答のような表現で指示したと伝わっています」と土屋さん。政芳はろくろをあえて逆に回してふわっとした柔らかみのある感じに仕上がるよう工夫したという。

 では、不昧公好みとはどんなものだろうか。「千利休の簡素の美と小堀遠州のみやびの美、酒井抱一を中心とする江戸琳派の粋が融合したのが不昧公の美意識。それで雲善窯のみやびな感じも好んだのでしょう」。不昧公の茶道文化を広める「不昧流研究会」代表の佐藤光恵さん(86)は語る。

 土屋さんは、没後200年の記念作として、3代善六作の「双鶴図 黒茶碗」写しの制作を決めた。家に伝わる不昧公からの注文を記した記録「不昧公御用命品控」などから選んだものだ。雲善黒と呼ばれる秘伝の釉薬で焼いた茶碗に2羽の鶴を描くこの茶碗なら、不昧公が好んだ鶴の図柄と秘伝が残せる。

 松平家が編集した「松平不昧でん」によると、正室のせい姫は和歌に優れ、茶器の箱書きもしたといい、時に不昧公と合作を楽しんだという。「夫婦仲が良かったから双鶴の図柄を好まれたのかもしれませんね」。土屋さんはそんな想像も楽しむ。

 50歳代半ばで8代目の父の後を継いだ土屋さんにとっての目標は、2代目の立鶴写しの茶碗だ。「不昧公との親密な間柄があったからこそ、名品を生むことが出来た」と土屋さんは言う。

 「形は雲、作りは風の心もて」「絹布をつまみしごとくふんわりと」。家に伝わるそんな不昧公の教えに従って、「かちっと器用すぎないで、使い手の手になじむように」。そんな作品を目指し、土屋さんは今日もろくろに向かう。

 ◇茶人大名 一流の審美眼

 松江歴史館の藤間寛学芸専門監によると、不昧公は18歳で本格的に始めた石州流茶道を極め、やがて独自の茶道論を展開した。22歳頃から収集を始めた茶道具約900点を「雲州蔵帳」に記したほか、39歳から茶道具の名品を格付けした「古今名物類聚るいじゅう」を書き始めた。目利きとして知られ、収集品の一部は後に国宝にも指定されている。

 不昧公好みの茶道具は茶碗、茶入れなど約70種。職人に好みを伝えて技術を磨かせたという。

 茶道具収集で藩の財政を傾かせたとの逸話が残るが、佐藤さんは「不昧公が藩から受け取った手当は生涯で16万両余りで藩の総支出の2.4%。茶道具の購入費は11万両余りとみられ、藩の金を気ままに使ったわけではない」と指摘する。

無断転載禁止
18253 0 Shimaneの今 2018/04/26 05:00:00 2018/04/26 05:00:00 不昧の好んだ茶わんを今に伝えるため心を込めて制作する土谷雲善さん(松江市玉湯町の布志名焼雲善窯で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180425-OYTAI50014-T.jpg?type=thumbnail

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