藩財政救った薬用人参

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高麗人参の商品を前に思いを語る前社長の門脇恵美子さん(左)(松江市八束町で)
高麗人参の商品を前に思いを語る前社長の門脇恵美子さん(左)(松江市八束町で)
茶房で提供されている抹茶風の人参茶
茶房で提供されている抹茶風の人参茶

◇不昧公のDNA<5>

◇「由志園」に産地PRカフェ

 茶わんを彩る白くきめ細かな泡。口に含むと香ばしい風味が広がった。4月14日、松江市八束町の大根島にある日本庭園「由志園」に開店したカフェ「御種人蔘おたねにんじん茶房」で提供を始めた「抹茶風御種人蔘茶」だ。

 ボタンで知られる島は、国内で数少ない御種人参(高麗人参)の産地。独自にブレンドした人参茶は茶せんでたてた泡が消えにくい。「サポニンという成分が含まれているからなんです。この成分が血流をよくし、病を防ぐ」。由志園常務取締役の門脇竜也さん(39)はそう話す。

 松平松江藩7代藩主の松平治郷はるさと不昧ふまい公)の没後200年を機に、薬用人参が不昧公の藩財政立て直しに貢献した歴史や効能を知ってもらおうと、コーヒーや抹茶味で紹介し始めた。

 出雲地方で高麗人参の栽培を始めたのは、不昧公の父で6代藩主の松平宗衍むねのぶ。凶作による飢饉ききんなどで傾いた藩財政を「石高制に頼らない収益」で再建しようと試みたが、栽培は難しく、成功を見ずに他界した。

 「宗衍は種まきじいさん。花が咲いたのが不昧の時代」と評するのは、松江市史編纂へんさん委員の乾隆明さん(69)だ。不昧の時代に、幕府直轄の栽培地があった下野国(栃木県)から技術を学んだ藩士によって、ようやく成果を上げ始め、後に中国への輸出などで莫大ばくだいな富を得て、藩財政が潤った。

 由志園によると、大根島では1830年頃から藩の畑で栽培。明治維新後、栽培が自由化されてからは島民が手がけてきた。

 ただ島では人参栽培のほかに産業がなく、戦後は女性が県外でボタンの行商をして家計を支えた。由志園の前社長門脇恵美子さん(79)もその一人。「ほとんど一年中家にいられなくて。泣く子を置いて出るのはつらかった」と振り返る。

 そんな中、「島で働く場所を」と、父の栄さんが立ち上がり1975年、由志園を開園。島は観光地になり、年27万人が訪れるまでになった。栄さんは高麗人参茶を飲んで病気が治ったことから、同園では人参を使った商品の販売も行う。

 人参は出荷までに6年かかる上、収穫後20年は同じ土地で育てられない手間のかかる作物だ。観光客が増えて島の経済が活性化した一方、栽培から手を引く農家が相次いだため、由志園は2009年に農業生産法人を設立。現在は年間約1トンを生産する。

 由志園の門脇豪社長(48)は、「若い人の中には薬用人参を知らない人もいる。不昧公の時代から続く島の歴史と人参の歴史を守っていきたい」と力を込める。

 「先達の仕置し事は、何れの流れにも限るべからず。取用能事を、我のちからにすべき事」。不昧公は「茶湯心得」にそう記し、流派を問わず先達から学び、力にせよと教えた。茶会記には3月、ボタンを飾って客をもてなした記録も残る。

 不昧公の進取の気性と遺産は、ボタンの島の改革者・栄さんを経て次世代へと受け継がれていく。

◇17歳で藩主、家老と改革

 乾さんによると、財政難で9年も参勤交代が出来ず、36歳で退任した父・宗衍に代わり、不昧公は、17歳で藩主になった。老練な家老・朝日丹波郷保さとやすとともに「御立派おたてはの改革」に乗り出す。

 江戸屋敷の経費を抑えるなど質素倹約に努め、大阪の商人からの借金は元金のみの支払いを取り付けて以後、74年間で完済する道筋を付けた。

 宗衍が始めたろうそくの原料・ハゼや、木綿、薬用人参の栽培が軌道に乗り始めたほか、たたら製鉄を奨励。財政が好転すると、斐伊川や佐陀川を改修したり、藩有の船(御手船)を建造したりして、商品流通の利便性を高めた。(おわり)

無断転載禁止
18800 0 Shimaneの今 2018/05/01 05:00:00 2018/05/01 05:00:00 不昧の残した人参の伝統を伝え続ける前社長の恵美子さん(左)と渡部さん(松江市で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180430-OYTAI50000-T.jpg?type=thumbnail

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